2023年5月11日木曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【東京臨海高速鉄道 りんかい線 天王洲アイル駅】

 ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回は、天王洲アイル駅からスタートし、江戸時代の海岸線と令和の海岸線を辿ります。


 

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ビューッと強い風の音。駅から地上に出ると、前を歩く女性のロングヘアが乱れなびいています。新緑と共に映えているツツジの花も凄まじい勢いで左右に揺れています。そういえば今日は強風の予報が出ていました。サイクリング中は風に煽られないように気をつけて走らないと。

今回の車体は、DAHON K3。14インチサイズで7.8kgの軽量さを誇ります。持ち上げて軽いのは当然ですが、3速の変速を備えていて、走行性能も侮ることができません。

公共交通機関を利用して自転車を運ぶことを輪行(りんこう)といいます。サイクリングや旅行の行程の一部を自走せずに鉄道、船、飛行機、バスなどを利用するもので、遠くへ移動したり、時間を短縮することができます。

天王洲に「洲」という文字がついているのは、昔々は土砂が蓄積していた場所だから。土砂が積もって島となったので、アイル(=島)というわけです。


さっそく、K3を走らせて、駅周辺の散策開始。平日はオフィス街かもしれませんが、休日はまた別の顔を見せてくれています。色鮮やかな服を来ていている人、笑顔いっぱいに歩いている子供たちなど、賑やかな街の景色が広がっています。



実は、天王洲は水運が栄えた街。だから、運河が張り巡らされ、倉庫がたくさんあります。現代は水運は寂れてしまいましたが、倉庫の壁は芸術的なペイントで覆われていて、街を明るくしています。水辺にはレストランが広がり、テラス席から陽気な声が聞こえてきます。


違法駐輪から落ち着いた街並みを維持するためか、車だけでなく自転車でさえも進入禁止の箇所がけっこうありますので、要注意。

オシャレエリアのイメージが強い天王洲ですが、橋を一つ越えると、時間を200年くらい遡った雰囲気。車がやっとすれ違えるような細い道。今にも横から人が出てきそうな入り組んだ路地。向こうからは、少年野球帰りの子供たちが横に広がって歩いています。橋一つ隔てただけで、これだけ雰囲気が変わる場所も珍しいです。


そもそも天王洲エリアは埋立地。江戸時代まで遡れば、品川宿の海岸線です。明治以降に拡張された場所=天王洲、というわけです。海岸線の名残も発見。

この海岸線には江戸時代末期に台場がつくられました。台場があったところに作られた学校、その名もズバリ台場小学校。入口には灯台の記念碑が建てられていました。通ってくる小学生は自然と土地の成り立ちを学ぶことができそうです。

下町らしく路地を進んでいくと、ひっそりと神社が佇んでいました。観光スポットではありませんが境内は綺麗に保たれていましたので、地元でしっかりと祀られているのでしょう。


さて、品川宿。江戸時代、品川宿は海沿いに続く宿場町でした。そこで、品川宿沿いを走り、昔の海岸線に思いを馳せながらサイクリングをすることにします。

地元商店街が品川宿をアピールしていることもあり、街は煌びやかな格好で歩く観光客で賑わいを見せています。昔ながらの八百屋さんや、最近できたと思われる上品なケーキ屋さんまで、右に左に目移りするお店が並んでいます。

シャッターが下りていても、東海道の浮世絵が描かれていました。

目黒川のほとりにある荏原神社。明治天皇もここで休息されたとか。境内入口には恵比寿様が鎮座しています。

自転車を停めて、ふと横を見ると、解説板を発見。脇本陣跡であったことが記されていました。

品川寺(ほんせんじ)。七福神も祀られているお寺で、品川宿の真ん中あたりにあります。入口の大仏が迫力ありました。

しばらく進むと、橋がかかっています。この浜川橋は泪橋(なみだばし)とも呼ばれています。なぜ、涙?答えはこの先の品川宿京都口にあります。もう少し進んでみましょう。

いよいよ品川宿もおしまいです。ここから先は第一京浜と合流をして大通りとなります。この宿場の終わりにあるのが、鈴ヶ森刑場跡です。


江戸時代には、この刑場で多くの人が死罪となったそうです。いくら死罪といっても、縁者もいたのでしょう。鈴ヶ森刑場で死刑になるとき、最後の別れをしたのが、先ほどの橋。橋の上で別れの涙を流したのでしょう。泪橋と呼ばれるようになった所以です。

一方で、江戸時代に京都から東海道を旅してきた人は江戸に入る手前でこの刑場前を通りました。「将軍様のお膝元である江戸で悪いことをすると、こうなるぞ」という見せしめだったと言われています。旅をしていると磔を見るとか怖いですね。

現代ではすぐ横は第一京浜となり、たくさんのトラックが往来しています。

ここまで旧東海道を走ってきましたが、海側は埋め立てられてしまい、湾岸道路の雰囲気はほとんど感じられません。が、もう少し、湾岸沿いを走っていけば、令和の海岸線を見ることができそうです。

そこで、海に向かって走っていくことに。ここで大事なことを思い出させられます。今日は強風の日。海を目指して走るということは、強風の中を走るということ。向かい風や横風に注意しながら進んでいきます。


K3には3速の変速機が搭載されています。かなりの風でしたが、変速のおかげで進むことができます。


辿り着いたのが城南島海浜公園です。園内では、バーベキューを楽しんでいる人たちがたくさん。テントを広げ、休日を満喫している家族連れも目立ちます。

中には、海水浴場で見かけるスコップとバケツをもつ子どももいます。城南島海浜公園は、砂浜が広がる希少な場所です。東京23区にこのような場所があることに驚きです。

しばらくすると、大きな轟音が!そして真上を飛行機が通り過ぎていく大迫力。そして、隣ではシャッター音。周りを見渡せば、多くの人がバズーカのような超望遠レンズを構えています。

まさか東京23区に砂浜が広がっているとは!人口の砂浜とはいえ、東京=大都会のイメージが崩されます。



羽田空港が近いこともあり、飛行機の着陸を眺めることができました。

飛行機の轟音と波の音のコラボの中、写真撮影にしばし没頭しました。今度は望遠レンズ持参で来てみたい!

波打ち際で写真撮影をし続けたからでしょうか。強風を浴び続けたので、結構疲労が滲み出てきています。

ここからスタート地点の天王洲アイル駅まで戻るのはちょっと大変。しかし、K3なら気軽に電車に載せることができます。途中のモノレールの流通センター駅で素早く自転車を折り畳み、サイクリング終了とします。


 

今回巡ったポイントと走行ルートです。約20kmのサイクリング。現代のオシャレな天王洲アイルから旧東海道、そして城南島海浜公園の海岸線と、機動力よく巡ることができました。


 

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今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。

今回の自転車散歩では、軽さとコンパクトさがウリのK3を利用。折り畳んだ際のサイズが小さく、電車内でも邪魔にならずに運べます。3速あることで、今回のサイクリングのように風が強いときでも軽いギアを選び楽にペダルを回すことができます。

DAHONでは様々な折り畳み自転車(フォールディングバイク)をラインナップしていますので、走行機能と折り畳み機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあった製品を選んでください。

DAHONでは様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載しています。更新時にはFacebookTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもぜひチェックしてみてください。これまでの記事一覧は、こちらでご覧いただけます。

 

*使用車体
 DAHON / K3(Color:アーミー) 

*この記事で紹介している情報は、2023年4月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。