2021年7月29日木曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【東京メトロ 東西線 木場駅】

 ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。

いつも通勤で利用して通り過ぎているところで、機会があれば、一度途中下車をしてみたい駅がありました。東京メトロ東西線 木場駅。今回は、木場駅を起点として、東京湾岸沿いを巡り、湾岸の発展を感じられる風景を探しに出掛ける自転車の旅をご紹介いたします。



* * *


東西線木場駅といえば、乗客が最も多いエリアのひとつ。さすがに平日のラッシュ時間だと、輪行であっても自転車を持ち込むことはマナー違反ですが、日中であれば、それも可能。地下鉄の駅から降りてみると、ビジネスマンでごった返しているイメージですが、意外とそうでもない。やはり、新型コロナウイルスの影響でしょうか。


江東区は家屋が密集している印象がありますが、駅から降りて少し行くと大きな公園が広がっています。しかし、駅から降りて、少し進むと木場公園が見えてきます。江戸時代、木場は海辺の町で、材木置き場だった場所。まさに、「木場」という名前の通りの場所だったのです。そのため、昭和50年ごろまで、木場は材木置き場として利用されてきました。その後、多くの材木関連業者が南方の新木場に移転したため、跡地に設けられたのが、この木場公園です。


防災という観点で、避難所として利用されるだけでなく、毎年、角乗りという水に浮いた材木上でパフォーマンスを披露するイベントが開催されるそうです。木が水面に浮かんでおり、江戸時代当時の様子を思い浮かべることができます。


富岡八幡宮で祈願

木場から新木場へと真っ直ぐに向かったのでは、面白くありません。せっかくの自転車旅ですから、あえて大回りをすることで、東京湾沿岸を渡りたいと思います。まずは、周辺の砂州一帯を埋め立て、社地とした富岡八幡宮でお参りをして、道中の無事を祈願。


江東区で神社といえば、亀戸天神社、深川不動堂と並んで富岡八幡宮が有名です。この神社はなんといっても大相撲との関わりで有名な場所。神社の運営費を集めるために行われた江戸勧進相撲の発祥の地といわれ、現在でも新しい横綱の土俵入りなどが境内で行われるだけでなく、多くの相撲関連の石碑が立ち並んでいます。


晴海橋梁

富岡八幡宮を後にして、豊洲方面に向かいます。湾岸沿いを走っていると、目についたのが、見るからに古い橋。湾岸エリアは最近開発が進んだばかりで、現代風な街並みだと思っていましたが、その錆びた橋梁は明らかに昭和からそこに存在するものです。周りの近代的な建物との対比で興味が掻き立てられます。

遠くに一際目立つ錆びた橋。明らかに周りの雰囲気に溶け込んでいません。

近寄ると、ますます古さが強調されます。これは、1957年から臨港鉄道東京都専用線として、使われていました。晴海から豊洲エリアの開発のため物資を運ぶのに利用されていた鉄道ですが、その後、トラックが中心となったことで、利用されなくなりました。それでも、平成元年(1989年)まで利用されていたとのこと!つい最近まで利用されていたのかと思うと、驚きを隠せません。現在は遊歩道として再利用するために耐震補強工事を行っているとのことなので、完成が楽しみです。

書いていて気が付きましたが、30年以上も前なんですね。平成一桁は一世代前。おじさんにとっては平成は昨日の出来事です。



豊洲エリアを抜けて

晴海から豊洲の湾岸沿いを海沿いに進んでみます。海風が本当に気持ちよい場所。豊洲ぐるり公園という名前の通り、海景色を楽しみながら、ぐるりと進みます。水辺は目と鼻の先。それなのにビルに囲まれているというのが、いかにも都会らしく、それもまた一興です。


周囲に見える建造物がどれも楽しませてくれます。跳ね橋、オリンピック選手村、レインボーブリッジなど、何度も自転車を停めて写真撮影をしたくなるポイントばかり。なかなか先に進むことができません。

跳ね橋のアーバンゲートブリッジ。この辺りは商業施設があるので、自転車を降りて進む必要があるエリアがあります。注意してください。

対岸に見えるのが、オリンピック選手村。ローカル駅からはじめる自転車散歩【JR東日本 京葉線 八丁堀駅】の記事でサイクリングをしたエリアです。

有名なレインボーブリッジですが、台場からよりも、豊洲や晴海からの方が全貌が見えて、格好いいと思うのは私だけでしょうか。


お台場でもサイクリングを

豊洲を抜けて、次に辿り着くのは台場です。今や数多くの商業施設がならぶエリアですが、自転車レーンもあります。目指したのはお台場の先端にある南極観測船「宗谷」。


南極まではるばる訪れる船はどんな特殊なものだろうかと思っていましたが、意外と小さい船です。むしろ、この小さい船ではるばる南極まで訪れていると思うと感慨深いものがあります。


取材で訪れたとき、東京オリンピック開催に伴い、多くの場所が閉鎖されていたので、先に進むことができない場所もありました。オリンピックが無事に終了すれば、もう少し、走りやすくなるのかなと思い、再訪したい気持ちでいっぱいです。


お台場から新木場方面へ

平地ばかりと思っていた湾岸サイクリング、調子に乗って走り続けてしまいました。20km以上も休息せず、写真撮影を楽しみながら走っていたので、ちょっと疲れを感じます。休息をしたいと思っているタイミングで、偶然に見つけたのが佃煮屋さんです。


お店の名前は佃宝。佇まいからも老舗専門店というのがわかります。軒先に立っているソフトクリームののぼり。クセになるという佃煮味のソフトクリーム。これは挑戦してみたくなります。

佃煮は砂糖と醤油で味付けするのが一般的。単なる佃煮味ではなくて、佃煮専門店が実際に利用しているタレがそのままソフトクリームの上に。甘辛い佃煮のタレとソフトクリームのひんやりとした感触がサイクリングで疲れた体に染み渡ります。体力が徐々に回復していくのを感じます。最初は微妙な組み合わせと思っていた佃煮とソフトクリーム、気がつけば絶妙の組み合わせなのか、アッサリと完食してしまいました。まさに、クセになる味でした。

ソフトクリームを食べて元気を取り戻したところで、新木場方面を目指します。辰巳エリアで通り過ぎるのが辰巳桜橋。歩行者と自転車専用の橋なのに、その豪華さに圧倒されます。


この区間は国道357号が走るところ。トラックも多いので不安だったのですが、脇道を発見しました。すぐ隣をトラックがけたたましい音を立てて走っているとは思えない、緑あふれる公園「辰巳の森緑道公園」です。訪れたタイミングはまだ紫陽花が残っていました。無数の白い紫陽花が緑道上に植えられていてまるで街灯のようです。ずっと続く紫陽花の道。紫陽花が枯れても、これからの季節は避暑の道として涼しさを提供してくれそうです。





東京湾の多様な風景

辰巳の森緑道公園を抜ければ、新木場駅となりますが、もう少しだけ足を伸ばします。道沿いにそのまま進めば、夢の島公園、新木場緑道公園、若洲海浜公園と続きます。もともと空港予定地として考えられていたほどなので、広大な敷地。その周囲はサイクリングロードとなっていて、本当に海風に吹かれながら走ることができる気持ちの良い公園です。広がるのは東京湾。しかし、先程の豊洲ぐるり公園とは全く違う東京湾の景色です。


ビル群は遥か遠くで、開放感を感じることができます。多くの建造物を楽しめる豊洲ぐるり公園も良いですが、夢の島公園から若洲海浜公園へと連なる東京湾沿いの公園はまったく違った景観で、その対比が本当に興味深いものです。

新木場緑道公園からみえる海景色。地平線とDAHON Horize Discを重ねて撮影してみました。名前のとおり、フレームが水平ですね。


上を見上げると風車が回っていました。大きくて、全体を写真に納め切ることができません。ここでは風力発電も行っています。風車が回転しているときの風を切る「シュッ」という音を初めて耳にして驚愕。自分にぶつかるのではないか?とちょっと怖い思いがしました。


若洲海浜公園の先端まで到達。スカイゲートブリッジ近くから台場方面を見ると、夕日が見え始めました。このまま夕暮れまで待とうと思ったのですが、あいにくの天気で、太陽は雲隠れしてしまいました。夕焼けは心の中で想像します。


日が暮れてしまう前に新木場駅へ到着。スタート地点とゴール地点を同じにする必要がないのが輪行サイクリングの魅力です。新木場駅で自転車を折りたたみ家路につきました。


東京湾は魅力的なサイクリングスポットです。見る場所が違えば、全く違った海景色を堪能することができます。都内に限定しても、全く違う景色が広がっているのが、東京湾の魅力かもしれません。


今回巡ったポイントと走行ルートです。約28kmの自転車散歩でした。



* * *


今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回利用したDAHON Horize Discは20インチモデルでは最も太いタイヤが採用され、迫力十分なだけでなく、振動もしっかりと吸収をしてくれるので、長距離を走っても、疲れにくい折り畳み自転車です。皆さんもDAHONの折り畳み自転車(フォールディングバイク)を持参して、自転車散歩という休日の愉しみはいかがでしょうか。DAHONでは様々な折り畳み自転車をラインナップしていますが、走行機能と折りたたみ機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあった製品を選んでください。

DAHONでは、様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載しています。更新時にはFacebookやTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもありますので、こちらもぜひチェックをお願いします。


*使用車体
 DAHON / Horize Disc(Color:カーキ)2021年モデル

*この記事で紹介している情報は、2021年7月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。

2021年7月21日水曜日

イベント出展のお知らせ(CYCLE MODE RIDE OSAKA 2021)

 7月24日(土)・25日(日)の2日間、大阪 万博記念公園で開催される「CYCLE MODE RIDE OSAKA 2021(サイクルモードライド大阪2021)」に出展しますので、お知らせいたします。


試乗車台数200台以上!自転車関連ブランド100以上!西日本最大のスポーツサイクルフェスティバル CYCLE MODE RIDE OSAKA 2021に出展いたします。試乗コースは登り・下りエリアなど起伏に富んだ全長2kmのロングコース。普段なかなか試乗いただけないモデルもご用意しますので、ぜひ乗り比べてみてください。2022年モデルで登場した新色の車体もいち早くご覧いただけます。ぜひご来場ください。

名 称:CYCLE MODE RIDE OSAKA 2021(サイクルモードライド大阪2021)
会 場:大阪 万博記念公園 東の広場+EXPO’70 パビリオン *Link → アクセス
日 時:2021年7月24日(土)・25日(日) 9:30~17:00
    *万博記念公園の開園時間は9:30~17:00、最終入場は16:30までです。
入場料:[前売]午前券 1,000円 / 午後券 900円 [当日]午前券 1,300円 / 午後券 1,200円
    *公園入園料含む・税込
主 催:サイクルモード実行委員会(テレビ大阪、テレビ大阪エクスプロ)
問合先:サイクルモード大阪事務局 06-6947-0284
*イベントに関する詳細はCYCLE MODE RIDE OSAKA 2021 公式サイトをご覧ください。


当日DAHONブースにご用意する試乗車は以下のとおりです。
*車体画像はイメージです。実際の試乗車の仕様とは異なります *車体画像クリックで拡大

K3  Link→スペック等詳細(2021年モデルのページとなります)
14インチコンパクトフォールディングバイクの理想形。3段変速を装備しながらも本体重量7kg台を実現。フレームへの負担を軽減させるDeltecテクノロジーを搭載。
Speeds:3
Weight:7.8kg
Wheel Size:14inch
Rider Height Range:142〜180cm
Folding Size:W65 × H59 × D28cm
Saddle to Pedal:Min 600mm Max 860mm

試乗車Color:ガンメタル×ブラック、レッド×マットブラック
展示車Color:シャンパン
ガンメタル×ブラック

Speed RB スピード RB  Link→スペック等詳細(2021年モデルのページとなります)
待望のドロップハンドルモデルが久しぶりに登場。クロモリフレームの定番モデルとなる「Speed Falco」をベースに、ディスクブレーキを搭載し、走行性能を向上させたハイグレードモデル。
Speeds:20
Weight:12.0kg
Wheel Size:20inch(ETRTO 451)
Rider Height Range:142〜193cm
Folding Size:W82 × H66 × D56cm
Saddle to Pedal:Min 680mm Max 950mm

試乗車Color:メタル


Visc EVO ヴィスク エヴォ  Link→スペック等詳細(2021年モデルのページとなります)
DAHONが誇るオールラウンドバイク。Re-Barテクノロジーにより高いフレーム剛性を確保し、ユーザーのハイレベルな要求にも応えられる唯一無二の存在。
Speeds:20
Weight:10.9kg
Wheel Size:20inch(ETRTO 451)
Rider Height Range:142〜193cm
Folding Size:W82 × H65 × D39cm
Saddle to Pedal:Min 700mm Max 950mm

試乗車Color:マンゴーオレンジ


Deftar デフター  Link→スペック等詳細(2021年モデルのページとなります)
ミドルグレードからリリースする軽量性が特長のモデル。様々なカスタムへの拡張性も高く、ベースモデルとしても使用可能。
Speeds:8
Weight:9.9kg
Wheel Size:20inch(ETRTO 406)
Rider Height Range:142〜193cm
Folding Size:W78 × H65 × D35cm
Saddle to Pedal:Min 690mm Max 940mm

試乗車Color:ディープレッド


Speed Falco スピード ファルコ  Link→スペック等詳細(2021年モデルのページとなります)
精悍なルックスのクロモリフレームモデル。クロモリ特有のしなりとETRTO451ホイールがもたらす快適且つ伸びのある走りは「Speed」の名に恥じない性能を発揮してくれる。
Speeds:8
Weight:12.0kg
Wheel Size:20inch(ETRTO 451)
Rider Height Range:142〜193cm
Folding Size:W82 × H66 × D36cm
Saddle to Pedal:Min 680mm Max 950mm

試乗車Color:ピーナッツゴールド


Boardwalk D7 ボードウォーク D7  Link→スペック等詳細(2021年モデルのページとなります)
鮮やかなカラーリングがクロモリフレームに映えるヨーロピアンスタイルバイク。洗練されたデザインと街乗りに適した使用感からはエントリーグレードを超えた喜びが得られる。
Speeds:7
Weight:12.5kg
Wheel Size:20inch(ETRTO 406)
Rider Height Range:142〜193cm
Folding Size:W78 × H65 × D34cm
Saddle to Pedal:Min 675mm Max 945mm

試乗車Color:グラナイトグレー、チョコレート
※上の画像は今回ご用意するカラーとは異なります


Dash Altena ダッシュ アルテナ Link → スペック等詳細(2021年モデルのページとなります)
Lock Jawテクノロジーが可能とするスマートフォルムのクラシカルバイク。デザインと機能性を両立させ、週末のロングライドやライフスタイルを彩る1台として最適なパートナー。
Colors:[M] ブリティッシュグリーン [L] ダークネイビー
Weight:[M] 10.8kg [L] 10.9kg
Wheel Size:20 inch(ETRTO 451)
Transmission:16 Speed
Folding Size (cm):[M] W92 x H89 x D36 [L] W93 x H91 x D37
Saddle to Pedal (mm):[M] 710〜910 [L] 750〜960

試乗車Size:M、試乗車Color:ソイルグリーン
※上の画像は今回ご用意するカラーとは異なります

D-Zero D-ゼロ  Link→スペック等詳細(2021年モデルのページとなります)
DAHON創業当初リリースしていた初期型モデル、通称「OLD DAHON」をベースに、現代の仕様と組み合わせて復刻。ハンドポストのみ折りたたみできるセミフォールディング仕様。
Speeds:7
Weight:11.3kg
Wheel Size:16inch
Rider Height Range:142〜180cm
Folding Size:W136 × H63 × D19cm
Saddle to Pedal:Min 705mm Max 970mm

試乗車Color:クローム


Mako マコ  Link→スペック等詳細(2021年モデルのページとなります)
2008年にリリースされたDashシリーズの原型となるモデル。DAHONの歴史でも貴重なノンフォールディングモデルであり、往年のモデルをベースとしつつも、ディスクブレーキ仕様にアップデート。軽量性と走行性能を合わせたハイグレードモデル。
Speeds:20
Frame Size:470cm
Weight:10.0kg
Wheel Size:20inch(ETRTO 406)
Rider Height Range:165〜175cm

試乗車Color:アイスブルー


Calm カーム  Link→スペック等詳細(2021年モデルのページとなります)
モデル名の通り「穏やか」な乗りやすさを重視したバイク。サイズも身長に合わせて2サイズから選べるタウンユースモデル。
Speeds:7
Frame Size:[M] 460cm  [L] 500cm
Weight:[M] 10.7kg  [L] 11.6kg
Wheel Size:20inch(ETRTO 406)
Rider Height Range:[M] 156〜165cm   [L] 165〜175cm

試乗車Size:L(500)、試乗車Color:スティールブルー





*ご用意する試乗車は事情により変更になる場合があります。
*出展ブースでも感染予防対策を行います。
*ヘルメット・グローブについては、感染防止の観点からブースでの貸出は行いません。
*イベントの詳細については、CYCLE MODE RIDE OSAKA 2021 公式サイトをご覧ください。

2021年7月19日月曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【西武鉄道 池袋線 秋津駅】

 ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回は、西武鉄道 池袋線 秋津駅を起点に大泉学園駅までのルートを走ります。



* * *


異常気象が通常気象になりつつあるこの数年。空梅雨や早々の猛暑に苦しむ年もありますが、2021年は梅雨らしい梅雨になりました。曇り空の下でも、雨でなければ自転車で出かけたい……そんな気持ちを抑えきれない梅雨時某日、「くもり」の予報を信じて出かけます。今日のポタリングのスタート地点は、西武池袋線の秋津駅。路線の起点である池袋から30分ほどのベッドタウンです。「秋津」は東京都東村山市の地名ですが、駅舎とホームは東村山市と清瀬市、そして埼玉県所沢市にまたがって建っているというボーダーレスな駅です。


改札を出ると、駅の柱に貼り紙がありました。文面をなぞる視線の先を、ツバメがすいすいと横切ります。

貼り紙に促されて周囲を見渡すと、券売機の近くや、駅に隣接する交番の角などに、ツバメの巣がいくつも作られていました。ツバメは人とともに暮らす鳥ですが、近年の都心部では見かけることが少なくなっています。いつもの生活圏を少し離れただけで、さっそくうれしい出会いがありました。今年初めてのツバメにほっこりしつつ、気になるのはその見事な低空飛行……。ツバメが低く飛ぶと雨が降る、っておばあちゃんが言っていたような。

よく見ると雛のつぶらな瞳が見えます。だいぶ大きくなっていますが、まだ黄色いくちばしがあどけないですね。

駅を後にして清瀬市を走るうち、五叉路になっている「松山三丁目」の交差点に出合いました。ここは東京都清瀬市と埼玉県新座市、東京都東久留米市の1都1県3市が合流する場所です。遠出に罪悪感の伴うこのご時世ですが、ここでは交差点を渡るだけで複数の境を越えることになるわけです。そして案の定、パラパラと弱い雨が降ってきました。空は明るいまま5分ほど降っては止むことを繰り返すので、しばしカメラをしまってやり過ごします。

写真左手が東京都清瀬市。小金井街道を境に埼玉県新座市になり、さらにその手前は東京都東久留米市になります。

申し遅れましたが今回の相棒はDAHON Routeのコバルトブルー。灰色の雲が重く垂れ込めたこの日は孤軍奮闘、明るい青の車体で写真を鮮やかにしてくれました。ふかふかのサドルや気軽なグリップシフト、寄り道に便利なスタンドなど、親しみやすさがうれしいモデルですが、この時期に何より頼もしいのは前後のマッドガード(フェンダー)でしょう。雨上がりの湿った道でも泥ハネがなく、最悪の場合、雨が降っても安心です。そしてさらにどしゃ降りになったとしても、最悪の場合、タクシーを拾えば載せてもらえる。そんな気持ちで走れるのだから、やっぱり折り畳み自転車って最高です。


交通量の多い道を避けて走っていたら、少し道に迷ってしまいました。方角を頼りに進むと、細くて急な坂道に出ました。地図を見るとここは「大円寺通り」。その名の通りお寺の裏手のようです。コンクリートの法面がびっしりと苔むして、曇天と相まってなんともしっとりした雰囲気を醸しています。

この階段を上るとお寺の敷地なのでしょうか。少し前に弱い雨が降ったためか、苔がより色鮮やかに見えます。



大円寺通りの坂を下ると川にぶつかりました。めざしていた「黒目川」です。水は意外なほどに透明で、段差のある場所以外では水音を立てることもなく静かに流れています。今回のルートが平坦であることが、ゆるやかな水の動きでよくわかりました。


川沿いが自転車道になっていて、のんびりと安心して走ることができます。控えめな看板もありました。


こうした道ではよくランニングの人や自転車散歩の人に出会うものですが、この日は天気のせいかあまり人もいませんでした。沿道にはたくさんの花が咲いているところがあり、近くのお年寄りがお手入れをされている旨の貼り紙が。自転車を停めて写真を撮っていると、お散歩中らしいご夫婦も「きれいねぇ、すごい」と目を細めて通り過ぎていきました。

自転車道は西武線の線路をくぐります。こんな写真だって、晴れていればずっとましに見えるのに……。

黒目川のカルガモの親子。雛は2羽しかいませんでした。きっとたくさんいた兄弟たちの分まで、元気に育てー!

とうもろこし畑があちこちにあり、その場で販売しているところもありました。

黒目川を離れて走りながら、「ひがしくるめ」を流れる「くろめがわ」の名前について考えました。賢明な読者の方なら、このふたつが無関係ではないことにお気づきでしょう。起源は川の名前が先のようです。明治時代に「久留米村(くるめむら)」が生まれたとき、この地を流れる「久留米川(くるめがわ)」からその名をとったとされています。その音が転じて現在の黒目川になった、というのが一般的な説だとのこと。同じく黒目川流域である埼玉県新座市によると、川の名前の由来にも諸説あるそうですが、個人的には「川の蛇行により水面がクルメク様子からきた」という説が気に入りました。「くるめく水面」ーー笹舟でも浮かべてみたくなるような、ぜひ使ってみたいすてきな日本語です。

一見すると何の変哲もない住宅街ですが、ここは境界好きの人にはよく知られるスポットです。

真っ白な空を嘆きながら進み、練馬区西大泉町に到着しました。ここは四方を埼玉県に囲まれた東京都。つまり「飛び地」です。ごみ収集などの行政区分も東京都に属しており、なぜこのような形で残っているのかは資料もなく自治体でもわからないとのこと。複数の境界に建つ駅からスタートして、入り組んだ都県境を通ってきましたが、ここにも複雑なボーダーが存在しました。愛好家も多いこうした土地ですが、目に見えるものは何もないということも不思議です。

至近距離に並ぶマンホールのふたも……。

左側は東京都の花であるソメイヨシノが描かれたもの。東京都区部に設置されるデザインです。

右側のふたは新座市の木・モミジがデザインされています。中央にはカタカナの「ニ」と「ザ」を用いた市章も。

出典:国土地理院ウェブサイト/埼玉県に囲まれた飛び地の東京都練馬区西大泉町(赤い線内)。緑の線が都県境(南側が東京都)。


静かな住宅街に野菜の無人販売を発見。トマトやきゅうりはまだありましたが、枝豆がほしかったので無念。

今回ゴールに設定したのは、スタートの秋津駅と同じく西武池袋線の大泉学園駅。名前に反して、駅の近くに「大泉学園」はありません。ぼんやりと走っていたらふいに、以前勤めていた職場のことを思い出しました。その職場にはこの大泉学園駅に住んでいるSさんと、西武多摩湖線の「一橋学園駅」に住んでいるWさんという人がいました。Wさんが「別にうちは一橋大の最寄駅じゃないんだよね」と言い、Sさんも「そうそう、うちも!」と相槌を打って、西武線談義に花を咲かせていたものでしたーー。Sさん、まだ大泉学園に暮らしているのかな。ふたりとも元気にしてるかななどと考えているうちに、次の目的地が見えてきました。なぜ駅名と実情が異なるのかは、関心のある方はぜひ調べてみてください。鉄道会社の都市計画や街の変遷がうかがえて、これまた興味深いものがあります。

突如として現れる飼料タンク。角度によっては、遠くのタワーマンションとの異色の2ショットも拝めます。

めざしていたのはこちら、東京23区唯一の牧場です。最寄の大泉学園駅から徒歩圏内で乳牛が飼育されていて、柵の中には白黒のホルスタインが見えます。通常は見学もさせてくれる牧場ですが、コロナ禍のため防疫の観点から立ち入ることは遠慮しました。道の反対側では搾りたての牛乳を使ったアイスが販売されているので、味覚で牧場気分を満喫することは可能です。絶対食べたい!という方は早めの時間にお出かけください。

さて、牧場から5分ほどで、最後の目的地である大泉学園駅に到着です!

こちらは駅北口。曇り空でも行き交う人も多くにぎやかです。

エレベーターを上がった北口コンコースには、「大泉アニメゲート」があります。2015年に整備されたこの歩行者通路には、練馬区ゆかりのアニメキャラをかたどった等身大のブロンズ像が。ちなみに大泉学園駅の名誉駅長は『銀河鉄道999』の車掌さんで、発車メロディーはタケカワユキヒデさんの「銀河鉄道999」という徹底ぶりです。

手塚治虫先生の虫プロダクションが練馬区で創設されたことから、『鉄腕アトム』のアトム像。

『うる星やつら』のラムちゃん。作者の高橋留美子先生は練馬区で30年来活動されているそうです。

松本零士先生は半世紀以上練馬区に住んでいるとのこと。『銀河鉄道999』のメーテルと鉄郎像。

銀河鉄道株式会社の定期券もあって芸が細かいですね。

さて、梅雨空のハラハラスリリングなポタリングはここまで。またポツポツと雨が降り出していたので、迷うことなく輪行して帰宅します。雨の止み間を縫って走ることができたのは幸運と思って及第点にします。

そうそう、大泉アニメゲートには『あしたのジョー』の矢吹丈もいました。作画のちばてつや先生だけでなく、原作者の高森朝雄さんも練馬区在住なのだそうです。ブロンズ像は等身大とのことですが、矢吹氏のものは筆者と目線がほぼ同じで、「あれ、ジョーこんなに小さいの?」と意外に感じていました。帰宅後に調べたところ、デビュー当時のジョーは160cm台前半だったとの情報を見つけて納得。アニメキャラとの背比べって楽しいですね。顔も小さくてスタイルがよかったし、2次元のままでは得られなかった感覚を得てうれしくなりました。

「今度は晴れてる日に来いよな……!」


今回巡ったポイントと走行ルートです。東京都と埼玉県の都県境を何度も跨いだ、約13kmの自転車散歩でした。



* * *


今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回利用したDAHON Routeはエントリーモデルながらもマッドガード(泥除け)やキックスタンドなどデイリーユースに便利なパーツが標準装備、加えて直観的に扱いやすいグリップ式シフター、手の平にフィットしやすいエルゴタイプのグリップ、ふかふかのサドルなど、ちょっとしたサイクリングに快適な装備が満載のモデルです。皆さんもDAHONの折り畳み自転車(フォールディングバイク)を持参して、自転車散歩という休日の愉しみはいかがでしょうか。DAHONでは様々な折り畳み自転車をラインナップしていますが、走行機能と折りたたみ機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあった製品を選んでください。

DAHONでは今後も、様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載いたします。更新時にはFacebookやTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもありますので、こちらもぜひチェックをお願いします。


*使用車体
 DAHON / Route(Color:コバルトブルー)2021年モデル

*この記事で紹介している情報は、2021年7月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。