2021年6月11日金曜日

価格を大幅に抑えた特別モデル「Hit」リリースのお知らせ

この度、コロナ禍が続ているいる中で、通勤や外出をしなければならない方に少しでも自転車を活用していただくため、オプションパーツを標準装備しながらも価格を大幅に抑えた特別モデル「Hit」の限定販売が決まりましたので、お知らせいたします。
 


「Hit」というモデル名は、「Hit the pandemic」=「パンデミックに打ち勝つ」という想いを込めて命名されました。

コロナ禍により日常生活が一変し、ライフスタイルの変化にあわせて急激に自転車のニーズが高まっていることから、現在世界的に自転車の安定供給が困難な状態にあります。ライフラインの一つでもある自転車を必要とする方にお届けしたい、コロナ禍が続ているいる中で通勤や外出をしなければならない方に少しでも自転車を活用していただきたい、という想いから急遽このモデルが特別に開発されました。


Hit ヒット
タウンユースには欠かせない「バスケット」と「フェンダー」のオプションパーツを標準装備した特別仕様。
車体カラー:Matte Black
完成車価格:¥47,300(税込)*オプションパーツ込み

*ご予約は今からしていただけますが、実際の販売開始は7〜8月頃を予定しています。
*バスケット及びフェンダーの入荷は車体の入荷と異なる場合がありますので、納車を急がれる方は後日オプションパーツが入荷してから再度店頭にて装着させていただきます。そのため納車内容ついては最寄りのDAHON正規販売代理店へお問い合わせください。
*数量限定販売のため完売次第終了し、再販の予定はありません。



<SPECIFICATIONS>
Wheel Size:20inch(ETRTO 406)
Transmission:6 Speed
Folding Size (cm):W82 × H66 × D35
Frame:Alloy frame, V-Clamp technology, w/Luggage socket
Fork:Hi-Ten steel
Handlepost:Radius adjustable post, leftside folding
Seatpost:Aluminum, 33.9x580mm
Wheel / F:Dahon Custom aluminum 406, 28H, OLD:74mm Wheel / R:Dahon Custom aluminum 406, 28H, OLD:126mm
Tires:DAHON Custom, 20x1.75, A/V
Crankset:Aluminum, 52T, double chainguard Derailleur / F:N/A
Derailleur / R:DAHON Custom , 6-8S
Shifter:DAHON Custom
Cassette:14-28T
Pedals:Folding pedal
Kickstand:Aluminum
Others:Basket & Mudguard

※詳しくは最寄りのDAHON正規販売代理店までお問い合わせください。
 Link → DAHON 2021ディーラーリスト

2021年6月4日金曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【JR東日本 京葉線 新浦安駅】

 ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回は、JR東日本 京葉線 新浦安駅からスタート。東西線 浦安駅を目指し、浦安の新旧を体感したいと思います。



* * *


千葉県浦安市といえば、何を思い浮かべるでしょうか。東京に最も近い街、東京ディズニーリゾートで有名な場所、埋立地の多い湾岸沿いの街などを思い浮かべるかもしれません。それは間違いではありませんが、それだけでは語り尽くせない魅力がこの街にはあります。

今回は、JR京葉線新浦安駅からサイクリングスタート。ここまでは電車を利用してきました。公共交通機関を利用して自転車を運ぶことを輪行(りんこう)といいます。サイクリングや旅行の行程の一部を自走せずに鉄道、船、飛行機、バスなどを利用するもので、遠くへ移動したり、時間を短縮することができます。新浦安駅は東京からも20分ほどで到着です。DAHON K3は14インチサイズで車重は7.8kgと軽量で輪行も簡単に行うことができます。

 

三番瀬エリアで海風に吹かれる

まずは、浦安一番の景勝地として知られる三番瀬を目指します。三番瀬は東京湾の奥地に位置し、その界隈はきっと汚れているというイメージがあるかもしれません。しかし、貝やアサリやノリが取れるなど、現代においても漁場として利用されている場所もあります。


三番瀬というなら一番と二番もありそうですが、それはありません。名前の由来ははっきりとは分からないようですが、浦安、市川、船橋、習志野に広がる遠浅の干潟を三番瀬と呼んでいます。

船橋市や市川市側(東側)の三番瀬は工場が並んでいますが、浦安市の三番瀬は開放的な公園が広がっています。海岸沿いに整備された道は走りやすく、普段であれば多くのランナーやサイクリストで賑わっています。通りに面した住宅街も異国情緒が漂う雰囲気。オーストラリアのゴールドコーストに迷い込んだような気分を満喫できます。

開放感でいっぱいの道。

 ニュータウン。

おしゃれな建築が並んでいます。

驚いたのは浦安市三番瀬環境観察館。ここを訪れると、三番瀬の環境について多くのことを学ぶことができます。渡鳥や海の生物についても写真や展示で紹介されていて、令和の時代でも海洋生物が多いことを学習し理解が深まりました。

浦安でみられる海洋生物です。

浦安はもともと漁業の街。しかし、漁業権はすでに放棄しています。だから、海は汚れていて、魚も住めないのかと思っていましたが、令和の時代でも海洋生物が溢れることを知ることができました。

サイクリングで訪れた日は快晴。三番瀬を臨む浦安市総合公園では、家族連れ、カップル、ジョギング、ウォーキング、フィッシングとみんなが思い思いに休日のレジャーを楽しんでいました。

自転車を停めて、芝生の上で海風に吹かれました。

釣りを楽しむ人もたくさんいます。

よくドラマの撮影で利用されています。

浦安にも富士山?

海沿いを気持ちよく走っていて気がつくのは、浦安は埋立地であるということ。かつて、遠浅の海が広がっていたこのエリアは埋め立てられて街が広がっています。だから、道はほぼ平坦路。自転車で走るにはうってつけの街といえます。

地元の方に話を聞くと、浦安富士として有名な山があるとのこと。埋立地にある山。NHKの番組『ブラタモリ』でも紹介されたらしいです。これは見逃せません。

浦安富士に向かう道沿いに綺麗な紫陽花を発見。すかさず、自転車を停めて撮影しました。徒歩ではたどり着けない距離、車では簡単に止まれないし見つけられません。自転車散歩だからこその発見です。

浦安富士は浦安中央公園にある小高い丘。標高はなんと14メートル。公園内に土を持って高台を人工的につくったそうですが、残念ながら、展望は臨めませんでした。聞くところによると、以前は、東京タワーをみることができたり、東京湾を一望することができたそうです。

山頂の小屋から撮影。木々の向こう側では、この公園でも休日を満喫している人がいたのが印象的でした。浦安市にはこういう公園が点在しています。

『べか舟』ってなんですか?

浦安富士をあとにして、浦安市北部を目指します。浦安市の真ん中を流れる川が境川。この川沿いにそって、走ってみることにしました。途中で発見したのが、なぞのモニュメント。その名も『べか舟河童』。注意書きを読むと、河童が住めるような綺麗な川にしようという記念碑であるようですが、「べか舟」とはなんでしょうか。

地図で確認すると、近くには郷土資料館がありますので、自転車を駐輪し資料館を訪問します。

べか舟河童。なかなか先へと進みませんが、こういう寄り道がしやすいのも折り畳み自転車の魅力です。

郷土資料館では、漁師町だった頃の街並みが再現されています。地元小学校の社会科見学などで役立てられているようですが、大人がみても十分に楽しめる内容です。

さっそく「べか舟」について確認をすると、手漕ぎボートのことでした。べか舟と呼ばれる小型舟で、漁業を営んでいたそうです。山本周五郎氏の小説『青べか物語』は浦安市が舞台になっていて、当時の浦安町の様子に想いを馳せることができます。

浦安が漁業で栄えていた頃、自転車で東京まで行商に出ていたそうです。ときに、埼玉県まで遠征することもあったとか。さすが、自転車、遠くまで行くことができますね。

資料館の方に話を伺うと、漁村だった頃から高度経済成長期の発展について多くのことを伺うことができます。なかでも、印象的だったのが、郷土資料館の所在地です。この郷土資料館があるあたりが以前は海岸線で、ここから先が埋立地であるという事実。つまり、ここまで自転車で走ってきたルートは全て埋立地だけれど、ここから先は大地。この郷土資料館が新旧の交差点になっているのです。まさに、サイクリングで浦安を巡る今回の旅には欠かせない場所でした。

べか舟。昭和の高度経済成長期まで写真のような街並みがひろがっていたとか。ちょっと今では想像もできませんが。

フラワー通り

境川沿いに上流へ進んでいくと、街並みが少しずつ古くなっていくことを感じます。いつのまにか、異国風の街並みは姿を消して、典型的な日本家屋の街並みとなっていきます。

フラワー通りのすぐ手前に、煎餅屋さんを発見。浅田せんべい本舗。なんと創業100年以上の煎餅専門店。醤油で味付けされた上品なお煎餅はお土産にぴったりです。

旧濱野医院。以前は病院でしたが、現在は、建物が保存されているだけです。昭和4年からある建物で、当時の洋風デザインを採用。確かに昔のヨーロッパにありそうな佇まいです。

旧濱野医院を過ぎると、道路脇のどぶ板に絵が描かれています。ここはかつてのメインストリートであった浦安フラワー通りです。その名前に相応しく、お花の絵が描かれている道が続きます。

かつての繁華街というだけあって、道路沿いには老舗の商店が並んでいます。道路幅も狭く車もほとんど入ってきません。ゆっくりと休日の時間が流れていきます。


フワラー通り沿いにある旧宇田川家住宅。新型コロナウイルスの影響で中に入ることはできませんでしたが、その佇まいに圧倒されました。


清瀧神社、境内には大きな富士講がありました。横から、本殿を覗くことができる珍しい神社です。

清瀧神社横にある旧町役場跡。

猫実珈琲店で一休み

新浦安から郷土資料館を抜けて、浦安駅近くまで来ました。たくさん寄り道しながらサイクリングをしたので、結構疲労が溜まっています。シリーズ定番となったコーヒー休息をしなければいけません(笑)。


訪れたのは路地にある猫実珈琲店。アットホームな店内に猫に関連したアイテムが並びます。コーヒー注文をして待っている間に店内を見渡すと、興味深いものがたくさん並んでいることに気がつきます。感傷に浸っていると、運ばれてきたのがエチオピアのスペシャリティーコーヒーと、店長手作りのチーズケーキ。さっぱりとした軽いコーヒーとパイナップル風味のチーズケーキが疲れを癒してくれます。

一般的なカフェとは何かが違います。コーヒーが美味しいお店は他にもあるし、ケーキが美味しいお店は他にもあります。でも、猫実珈琲店には他とは違う独自の魅力があります。マスターと話をしていると、はっ!と気がつきました。その魅力はお店の人との距離感。お店入り口から温かさを感じさせる佇まい。こぢんまりとした店内に広がる猫グッズ。そして、美味しい手作りコーヒーとケーキ。これら全ては、お店に訪れているというよりも、仲良しの友人の家のリビングルームにお邪魔したような気持ちです。お店で飲むコーヒーじゃなくて、友人の家で飲む最高のコーヒー。これは疲れを癒してくれる。



猫実珈琲店は最中で有名なお店。最中が猫の形をしている可愛らしさ。食べるのがもったいないです。甘すぎず、大人な味の最中です。お土産にたくさん買いました。

浦安駅から輪行、でもその前に

今日のサイクリングはすでに充実感に満たされています。猫実珈琲店から東西線浦安駅はすぐ。このまま輪行して帰ることにしました。

しかし、駅に向かって進んでいると、新しいお店を発見。佃煮屋『内田商店』です。浦安は漁業の街、佃煮屋さんもたくさんあります。内田商店は工場からの卸販売中心だったのが、新しく小売店もはじめたとのこと。明るい店員さんに迎え入れていただき、定番のアサリ佃煮を購入。この日の夜ご飯が華やいだことは言うまでもありません。


美味しそうな佃煮。真空パックに詰め込まれた佃煮を買えば、今晩の晩酌、明日のおかずにピッタリなこと間違いなしです。

浦安をサイクリングしてみると、小さな街に魅力が凝縮されていることが感じられます。もちろん三番瀬に広がる東京湾の景色は魅力的です。しかし、それよりも魅力的なのが、新しく開発された浦安と、漁村の名残がある浦安の対比、その2つを体験できるのは自転車ならではの楽しみです。

なによりも素晴らしいのが、そこで暮らしている地元の人たちとの距離の近さ。浦安をサイクリングしていると伝えると、多くの情報を教えていただきました。おかげで当初予定していたルートとは違うルートになってしまいましたが、そういう楽しみができるのは折り畳み自転車の魅力。徒歩やドライブでは絶対に感じることができません。


今回巡ったポイントと走行ルートです。新しく開発された浦安と、漁村の名残がある浦安の対比を楽しめた、約13kmの自転車散歩でした。



* * *


今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回利用したDAHON K3は14インチのコンパクトタイヤに3速ギアが搭載されています。タイヤが小さいので、スピード出ないと思うかもしれませんが、重いギアを選択すれば、颯爽とスピードを出して走ることもできます。皆さんもDAHONの折り畳み自転車(フォールディングバイク)を持参して、自転車散歩という休日の愉しみはいかがでしょうか。DAHONでは様々な折り畳み自転車をラインナップしていますが、走行機能と折りたたみ機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあった製品を選んでください。

DAHONでは今後、様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載いたします。更新時にはFacebookやTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもありますので、こちらもぜひチェックをお願いします。


*使用車体
 DAHON / K3(Color:シルバー×ブラック)2021年モデル

*この記事で紹介している情報は、2021年5月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。

2021年6月3日木曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【都電荒川線 新庚申塚停留場】

 ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回は東京に残る唯一の都電、都電荒川線の「新庚申塚停留場」からスタートします。



*  *  *


「荒川線」は、東京都交通局が運営する「都電」唯一の生き残り路線です。1900年代初頭に誕生した都電は、古くは「市電」と呼ばれ親しまれてきました。最盛期には都内に40路線を誇り、人々の生活の足として活躍したものの、自動車の普及によって利用者が激減。軌道敷も次々に撤去され、現在は荒川区の三ノ輪橋から新宿区の早稲田まで、約12kmを結ぶ荒川線のみとなりました。大型バスよりもコンパクトな車内に持ち込める自転車は「カバーに入れた折りたたみ自転車」のみに限られます。



今回のスタート地点は、そんな都電荒川線の「新庚申塚(しんこうしんづか)」です。公式HPを見ると、電車が停まるのは「駅」ではなく「停留場」。車内には降車ボタンもついていて、前乗り方式なのも路線バスのようです。相棒の自転車はDAHON Mu SLX。飛行機輪行した先で50km超えのルートを共にしたこともあり、軽さにも走行性能にも絶対の信頼を寄せている大好きな20インチ(406)モデルです。都市部の輪行で一番重視しているのは、人の多い場所でもほかの人の邪魔にならないこと。都電の車内は狭く、お年寄りも多く乗っているので、いつも以上に緊張感をもって臨みました。女性や小柄な人でもさっと担いで動ける軽さは、想像以上の安心感を与えてくれます。

まずは白山通りを南下します。歩行者と自転車の分離表示がある歩道もずいぶん増えましたね。

さて、歩道の一角を拝借して自転車を組み立てます。すぐ横にはアウトドアチェアを木陰に置いて新聞を読んでいる男性がいましたが、話しかけられることもなく、といって邪魔だと叱られることもなく。東京らしいこうした距離感を冷たいという人もいますが、個人的にはこれはこれでアリです。

霊園に向かって道を折れると、大通りの賑やかさとは打って変わった静けさに包まれます。犬の散歩をしている人もいました。

まずめざすのは染井霊園。「染井」という名でお察しの方もいるかもしれませんが、旧染井村はいまや全国に広まった桜「ソメイヨシノ」の生まれた地でもあります。この染井霊園も春には桜が満開になり、お花見スポットとしても親しまれています。


東京都内には、ほかにも桜の名所として知られる墓地が複数あります。たとえばお値段も人気もトップクラスとされる青山霊園などと比べると、この染井霊園はこぢんまりとしていて、ご先祖さまを身近に感じられそうな雰囲気です。子供乗せ自転車のお母さんや小学生たちが駆け抜けたりするのもいい感じ。著名人の墓地をめざして散歩に来る人がいる一方、ごく普通にお墓参りに来ている人もいて、お線香のいい香りが漂っています。

私事ですが、曽祖父は明治から大正にかけて品川区に住んでおり、都電の運転手をしていました。しかしそれを知ったのはつい最近。先祖への無関心、とりも直さず過去への無関心を猛省したばかりだったので、お墓に手を合わせる家族の姿は、なんだかとても尊いものに見えました。

霊園内には著名人のお墓の位置を教えてくれる標識やマップもあります。墓石を撮るのは気が引けてやめました。

ここには二葉亭四迷や芥川龍之介、岡倉天心などさまざまな著名人の墓地があります。個人的にうれしかったのは高村光太郎のお墓です。社会に出たばかりの悩み多きころ、彼の詩に励まされたことがありました。高村先生、その節はお世話になりました。その父・高村光雲や、妻・智恵子もここに眠っているとのこと。「歴史上の人物」としか考えていなかった人も、墓碑の前に立ってみると存在を実感するから不思議です。

あっ、飛び出し坊や!


霊園をあとにして、JR上中里駅方面へ向かって北上。親切な注意書きに心して、ゆるくブレーキを引きながら坂を下りましょう。強い日差しに火照った頬をなでる風が爽快です。振り返れば、下ってきた坂の名前は「蝉坂」。折しも小径車に乗ってきたお姉さんが、自転車を下りて押して登り始めるところでした。親近感を抱いて振り返りましたが、お姉さんの愛車は少なくともDAHONではないようでした。



やってきたのは「荒川車庫前」停車場のすぐ近くにある、「都電おもいで広場」。写真がひときわ微妙な理由は、緊急事態宣言を受けて営業が見合わせられており、敷地内に入れなかったためです。

展示されているのは旧7500形。都のHPによると、車内には運転台やジオラマもあるとのこと。

こちらは現役車両。左はレトロモダンな7700形、右は省エネタイプの8800形。型もカラーバリエーションも豊富です。

撮影していると、マスクをした家族連れがやってきました。フェンス越しながら展示車両を見ることはできるし、お休み中のおもいで広場のすぐ隣は稼働中の車庫なので、いろいろな車両に会うこともできるからでしょう。お互いに譲り合いながら写真を撮りましたが、「こんにちは」「すみません、どうぞ」と、小声で最小限の言葉を交わすのみ。屋外展示を敷地の外から眺めていたら、都電の思い出よりも、コロナ禍以前の日常生活に思いを馳せていることに気づきました。



次なる目的地のあらかわ遊園は、新型コロナウイルス感染症の影響ではなく、リニューアルのために休園中です。新装オープンは2022年春頃とのことですが、休園中も不定期に観覧車のライトアップを行なっています。今回はタイミングが合わず撮影することができませんでしたが、コロナ禍で悲しい閉業のニュースが多いなか、前向きな休業は大歓迎。密になって観覧車に乗る日が楽しみです。

カメラ目線の三毛猫。耳が切られているので地域猫のようです。

カメラ目線の鳩。

あらかわ遊園を通りすぎて北に向かうと、突き当たるのは隅田川。土手を上ると一気に視界が開けました。

過去には船が渡した隅田川を、首都高が傲然と横切ります。その手前のかっこいい施設は「みやぎ水再生センター」。

この先には隅田川を船でつなぐ「梶原の渡船場」がありましたが、交通手段の発達によって1961年になくなったそうです。市民の足の栄枯盛衰があったということは、それだけ古くから人の暮らしがあったということ。都電のあり方と重なります。

隅田川対岸、都営アパートの取水塔。ノスタルジーと近未来感を併せ持つ形状は、見つけるとなんだかうれしい。

隅田川から土手を下ったところにある白山堀公園。インパクトの強い遊具が魅力的です。

時代の流れがあまりに早く、「バブル」も「昭和」もすでに遠い過去のように語られる昨今ですが、二代、三代前ぐらいなら口伝でダイレクトに遡れることは、意外に忘れがちではないでしょうか。父母や祖父母の話も、なるべく存命中にたくさん聞いておきたいものです。

次なる目的地・飛鳥山も、そんな「少し前」の有名人に関連する場所です。近代日本経済の父とされ、新一万円札や大河ドラマに採用されるなど、現在絶賛フィーバー中の渋沢栄一さんが晩年を過ごした場所です。

かわいいパンの看板にひかれてペダルを止めました。そろそろおなかが空いてきたなと思っていたところです。

北区の渋沢フィーバーは郵便ポストにも及んでいました。埼玉県・深谷市のフィーバーも想像に難くありません。

飛鳥山モノレール「アスカルゴ」。反対側の公園入り口にはスロープがあるので、自転車はそちらから入りましょう。


好天に恵まれたこの日、公園内は多くの人でにぎわっていました。自粛生活の中、屋外の公園なら……と考える人が多いのでしょう。ソーシャルディスタンスを保ちつつ、先ほど買ったパンをいただくことにします。


公園内の至るところに渋沢さんののぼりが。パンはどれもおいしい! アジフライパンのキャベツの感じとか大好きです。

公園には3つの博物館がありますが、感染症拡大の状況に鑑みて休館を繰り返しています。お運びの際は必ず公式情報をご確認ください。渋沢栄一関連の建造物は外観だけでも楽しめるので、記念撮影をしている人も多くいました。書庫や茶室などの立派なたてものを誕生日プレゼントにもらえるなんて、貴族はやっぱりレベルが違います。


青淵文庫(せいえんぶんこ)は渋沢さんの書庫兼客間。渋沢家の家紋にちなんだデザインのステンドグラスがかわいい。

現在の清水建設が渋沢さんの喜寿に送った茶室、晩香廬(ばんこうろ)。青淵文庫も80歳のお祝いでもらったもの。


飛鳥山公園の西側の明治通りでは、大きなカーブを描いて坂を登る都電を見ることができます。荒川線が生き残ることができたのは、路線のほとんどが一般車線と分離された「専用軌道」になっていたため。しかし、この辺りは貴重な「併用軌道」になっていて、都電も自動車やバイクと同じ流れの中で走っています。

ここからの帰途は都電に加え、JRでも東京メトロでもお好みの方法を選べます。もちろん路線バスも通っているので、これだけの代替手段があるのに荒川線が存続していることは、しみじみすごいことだと感じました。

飛鳥山停車場から王子駅前停車場に向かい、専用の信号機で発車を待つ7700形。上空には電線がたくさんあります。

撮影のあと、過去の東京の道路事情を知る人に話を聞く機会がありました。都内各地の都電がすでに撤去ラッシュを迎えていた1970年代初頭、当時台東区の自動車ディーラーに勤めていたこの人は、納車のため、毎日都内のあちこちを走っていたそうです。

8900形の「都電落語会」ラッピング車両。ほかにも城北信用金庫など、地域密着企業の広告車両を目にしました。

「当時、都電は都内のあちこちを、ごく普通に走っていた。自動車が渋滞しているのは当たり前のことで、それが都電のせいだと考えたことはなかったけれど、都電が通り過ぎてくれるとほっとするところはあった」とのこと。それでも「当然いるものだと思っていたのに、本当にあっという間にいなくなったね」と寂しさを語りました。日常は失って初めてその大切さに気づくもの。我々はそれを昨年から嫌というほど思い知らされています。まさか失われた都電路線に共感することになろうとは……こうして、今回の自転車散歩は意外な結末を迎えたのでした。


今回巡ったポイントと走行ルートです。約9kmのショートトリップでしたが、昔懐かしい風景にたくさん出会いました。路面電車、都電荒川線目当てに行くのにも良さそうです。




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今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回利用したDAHONのMu SLXは20インチサイズ最軽量の8.6kgを誇るフラッグシップモデルなので、輪行時に持ち運んでも軽いのは当然、走行面でもその恩恵を受けることのできる理想のライトウェイトバイクです。皆さんもDAHONの折り畳み自転車(フォールディングバイク)で、自転車散歩という休日の愉しみはいかがでしょうか。DAHONでは様々な折り畳み自転車をラインナップしていますので、走行機能と折りたたみ機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあった製品をお選びください。

DAHONでは今後も、様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載いたします。更新時にはFacebookやTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもありますので、こちらもぜひチェックをお願いします。


*使用車体
 DAHON / Mu SLX(Color:ドライレッド)2021年モデル

*この記事で紹介している情報は、2021年5月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。