ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回は、JR東日本 京葉線 新浦安駅からスタート。東西線 浦安駅を目指し、浦安の新旧を体感したいと思います。
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千葉県浦安市といえば、何を思い浮かべるでしょうか。東京に最も近い街、東京ディズニーリゾートで有名な場所、埋立地の多い湾岸沿いの街などを思い浮かべるかもしれません。それは間違いではありませんが、それだけでは語り尽くせない魅力がこの街にはあります。
今回は、JR京葉線新浦安駅からサイクリングスタート。ここまでは電車を利用してきました。公共交通機関を利用して自転車を運ぶことを輪行(りんこう)といいます。サイクリングや旅行の行程の一部を自走せずに鉄道、船、飛行機、バスなどを利用するもので、遠くへ移動したり、時間を短縮することができます。新浦安駅は東京からも20分ほどで到着です。DAHON K3は14インチサイズで車重は7.8kgと軽量で輪行も簡単に行うことができます。
三番瀬エリアで海風に吹かれる
まずは、浦安一番の景勝地として知られる三番瀬を目指します。三番瀬は東京湾の奥地に位置し、その界隈はきっと汚れているというイメージがあるかもしれません。しかし、貝やアサリやノリが取れるなど、現代においても漁場として利用されている場所もあります。
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三番瀬というなら一番と二番もありそうですが、それはありません。名前の由来ははっきりとは分からないようですが、浦安、市川、船橋、習志野に広がる遠浅の干潟を三番瀬と呼んでいます。 |
船橋市や市川市側(東側)の三番瀬は工場が並んでいますが、浦安市の三番瀬は開放的な公園が広がっています。海岸沿いに整備された道は走りやすく、普段であれば多くのランナーやサイクリストで賑わっています。通りに面した住宅街も異国情緒が漂う雰囲気。オーストラリアのゴールドコーストに迷い込んだような気分を満喫できます。
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開放感でいっぱいの道。 |
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ニュータウン。 |
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おしゃれな建築が並んでいます。 |
驚いたのは浦安市三番瀬環境観察館。ここを訪れると、三番瀬の環境について多くのことを学ぶことができます。渡鳥や海の生物についても写真や展示で紹介されていて、令和の時代でも海洋生物が多いことを学習し理解が深まりました。
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浦安でみられる海洋生物です。 |
浦安はもともと漁業の街。しかし、漁業権はすでに放棄しています。だから、海は汚れていて、魚も住めないのかと思っていましたが、令和の時代でも海洋生物が溢れることを知ることができました。
サイクリングで訪れた日は快晴。三番瀬を臨む浦安市総合公園では、家族連れ、カップル、ジョギング、ウォーキング、フィッシングとみんなが思い思いに休日のレジャーを楽しんでいました。
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自転車を停めて、芝生の上で海風に吹かれました。 |
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釣りを楽しむ人もたくさんいます。 |
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よくドラマの撮影で利用されています。 |
浦安にも富士山?
海沿いを気持ちよく走っていて気がつくのは、浦安は埋立地であるということ。かつて、遠浅の海が広がっていたこのエリアは埋め立てられて街が広がっています。だから、道はほぼ平坦路。自転車で走るにはうってつけの街といえます。
地元の方に話を聞くと、浦安富士として有名な山があるとのこと。埋立地にある山。NHKの番組『ブラタモリ』でも紹介されたらしいです。これは見逃せません。
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浦安富士に向かう道沿いに綺麗な紫陽花を発見。すかさず、自転車を停めて撮影しました。徒歩ではたどり着けない距離、車では簡単に止まれないし見つけられません。自転車散歩だからこその発見です。 |
浦安富士は浦安中央公園にある小高い丘。標高はなんと14メートル。公園内に土を持って高台を人工的につくったそうですが、残念ながら、展望は臨めませんでした。聞くところによると、以前は、東京タワーをみることができたり、東京湾を一望することができたそうです。
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山頂の小屋から撮影。木々の向こう側では、この公園でも休日を満喫している人がいたのが印象的でした。浦安市にはこういう公園が点在しています。 |
『べか舟』ってなんですか?
浦安富士をあとにして、浦安市北部を目指します。浦安市の真ん中を流れる川が境川。この川沿いにそって、走ってみることにしました。途中で発見したのが、なぞのモニュメント。その名も『べか舟河童』。注意書きを読むと、河童が住めるような綺麗な川にしようという記念碑であるようですが、「べか舟」とはなんでしょうか。
地図で確認すると、近くには郷土資料館がありますので、自転車を駐輪し資料館を訪問します。
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べか舟河童。なかなか先へと進みませんが、こういう寄り道がしやすいのも折り畳み自転車の魅力です。 |
郷土資料館では、漁師町だった頃の街並みが再現されています。地元小学校の社会科見学などで役立てられているようですが、大人がみても十分に楽しめる内容です。
さっそく「べか舟」について確認をすると、手漕ぎボートのことでした。べか舟と呼ばれる小型舟で、漁業を営んでいたそうです。山本周五郎氏の小説『青べか物語』は浦安市が舞台になっていて、当時の浦安町の様子に想いを馳せることができます。
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浦安が漁業で栄えていた頃、自転車で東京まで行商に出ていたそうです。ときに、埼玉県まで遠征することもあったとか。さすが、自転車、遠くまで行くことができますね。 |
資料館の方に話を伺うと、漁村だった頃から高度経済成長期の発展について多くのことを伺うことができます。なかでも、印象的だったのが、郷土資料館の所在地です。この郷土資料館があるあたりが以前は海岸線で、ここから先が埋立地であるという事実。つまり、ここまで自転車で走ってきたルートは全て埋立地だけれど、ここから先は大地。この郷土資料館が新旧の交差点になっているのです。まさに、サイクリングで浦安を巡る今回の旅には欠かせない場所でした。
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べか舟。昭和の高度経済成長期まで写真のような街並みがひろがっていたとか。ちょっと今では想像もできませんが。 |
フラワー通り
境川沿いに上流へ進んでいくと、街並みが少しずつ古くなっていくことを感じます。いつのまにか、異国風の街並みは姿を消して、典型的な日本家屋の街並みとなっていきます。
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フラワー通りのすぐ手前に、煎餅屋さんを発見。浅田せんべい本舗。なんと創業100年以上の煎餅専門店。醤油で味付けされた上品なお煎餅はお土産にぴったりです。 |
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旧濱野医院。以前は病院でしたが、現在は、建物が保存されているだけです。昭和4年からある建物で、当時の洋風デザインを採用。確かに昔のヨーロッパにありそうな佇まいです。 |
旧濱野医院を過ぎると、道路脇のどぶ板に絵が描かれています。ここはかつてのメインストリートであった浦安フラワー通りです。その名前に相応しく、お花の絵が描かれている道が続きます。
かつての繁華街というだけあって、道路沿いには老舗の商店が並んでいます。道路幅も狭く車もほとんど入ってきません。ゆっくりと休日の時間が流れていきます。
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フワラー通り沿いにある旧宇田川家住宅。新型コロナウイルスの影響で中に入ることはできませんでしたが、その佇まいに圧倒されました。 |
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清瀧神社、境内には大きな富士講がありました。横から、本殿を覗くことができる珍しい神社です。 |
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清瀧神社横にある旧町役場跡。 |
猫実珈琲店で一休み
新浦安から郷土資料館を抜けて、浦安駅近くまで来ました。たくさん寄り道しながらサイクリングをしたので、結構疲労が溜まっています。シリーズ定番となったコーヒー休息をしなければいけません(笑)。
訪れたのは路地にある猫実珈琲店。アットホームな店内に猫に関連したアイテムが並びます。コーヒー注文をして待っている間に店内を見渡すと、興味深いものがたくさん並んでいることに気がつきます。感傷に浸っていると、運ばれてきたのがエチオピアのスペシャリティーコーヒーと、店長手作りのチーズケーキ。さっぱりとした軽いコーヒーとパイナップル風味のチーズケーキが疲れを癒してくれます。
一般的なカフェとは何かが違います。コーヒーが美味しいお店は他にもあるし、ケーキが美味しいお店は他にもあります。でも、猫実珈琲店には他とは違う独自の魅力があります。マスターと話をしていると、はっ!と気がつきました。その魅力はお店の人との距離感。お店入り口から温かさを感じさせる佇まい。こぢんまりとした店内に広がる猫グッズ。そして、美味しい手作りコーヒーとケーキ。これら全ては、お店に訪れているというよりも、仲良しの友人の家のリビングルームにお邪魔したような気持ちです。お店で飲むコーヒーじゃなくて、友人の家で飲む最高のコーヒー。これは疲れを癒してくれる。
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猫実珈琲店は最中で有名なお店。最中が猫の形をしている可愛らしさ。食べるのがもったいないです。甘すぎず、大人な味の最中です。お土産にたくさん買いました。 |
浦安駅から輪行、でもその前に
今日のサイクリングはすでに充実感に満たされています。猫実珈琲店から東西線浦安駅はすぐ。このまま輪行して帰ることにしました。
しかし、駅に向かって進んでいると、新しいお店を発見。佃煮屋『内田商店』です。浦安は漁業の街、佃煮屋さんもたくさんあります。内田商店は工場からの卸販売中心だったのが、新しく小売店もはじめたとのこと。明るい店員さんに迎え入れていただき、定番のアサリ佃煮を購入。この日の夜ご飯が華やいだことは言うまでもありません。
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美味しそうな佃煮。真空パックに詰め込まれた佃煮を買えば、今晩の晩酌、明日のおかずにピッタリなこと間違いなしです。 |
浦安をサイクリングしてみると、小さな街に魅力が凝縮されていることが感じられます。もちろん三番瀬に広がる東京湾の景色は魅力的です。しかし、それよりも魅力的なのが、新しく開発された浦安と、漁村の名残がある浦安の対比、その2つを体験できるのは自転車ならではの楽しみです。
なによりも素晴らしいのが、そこで暮らしている地元の人たちとの距離の近さ。浦安をサイクリングしていると伝えると、多くの情報を教えていただきました。おかげで当初予定していたルートとは違うルートになってしまいましたが、そういう楽しみができるのは折り畳み自転車の魅力。徒歩やドライブでは絶対に感じることができません。
今回巡ったポイントと走行ルートです。新しく開発された浦安と、漁村の名残がある浦安の対比を楽しめた、約13kmの自転車散歩でした。
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今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回利用したDAHON K3は14インチのコンパクトタイヤに3速ギアが搭載されています。タイヤが小さいので、スピード出ないと思うかもしれませんが、重いギアを選択すれば、颯爽とスピードを出して走ることもできます。皆さんもDAHONの折り畳み自転車(フォールディングバイク)を持参して、自転車散歩という休日の愉しみはいかがでしょうか。DAHONでは様々な折り畳み自転車をラインナップしていますが、走行機能と折りたたみ機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあった製品を選んでください。
DAHONでは今後、様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載いたします。更新時にはFacebookやTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもありますので、こちらもぜひチェックをお願いします。
*使用車体
DAHON / K3(Color:シルバー×ブラック)2021年モデル
*この記事で紹介している情報は、2021年5月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。