2022年12月30日金曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【西武鉄道 池袋線 富士見台駅】

 ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回は富士山がテーマ。東京界隈で富士山に縁がありそうな箇所を周ります。


 

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今でこそ高層ビルが乱立する東京の街です。江戸時代に遡れば、関東地方は様々なところから富士山を眺めることができたと記録に残っています。現在でも、冬場早朝などで、空気が澄んでいる、標高が高いといった条件が揃えば、富士山を東京から眺めることが可能なようです。

今回降りたのは西武池袋線の富士見台駅。その名前からわかる通り、以前はここから富士山を見ることができたと思われます。

公共交通機関を利用して自転車を運ぶことを輪行(りんこう)といいます。サイクリングや旅行の行程の一部を自走せずに鉄道、船、飛行機、バスなどを利用するもので、遠くへ移動したり、時間を短縮することができます。

駅の壁面に描かれているアートをみてください。今回の旅のテーマにふさわしいです。

地名を見れば土地の様子がわかります。富士見台=富士山の見える台地ですから、土地は割りと標高の高いところにありそうです(後で調べてみると海抜44mくらいでした)。駅周辺を走ってみて、富士山が見えそうなポイントを探しましたが、周囲は予想通りビル群に囲まれていて、景色が開けたところが見当たりません。


やっとたどり着いたのが歩道橋。ちょっと調べた感じではここから遠くの富士山をながめることができるとのことでしたが、まったく富士山らしき山は見えませんでした。

諦めずに、富士山が見えるスポットを巡ります。次に訪れたのは春日町交番。ここからも富士山が見えるという情報があったのですが、そもそもそれらしいアングルがありません。ちょうど、交番に警察官が立っていたので、聞いてみました。
「富士山は見えませんか?」
「え?見たことないなぁ。全く気にしたことなかった。でも、昔は見えたかもね。富士見という地名だし、実際にすぐそこの道は富士見通りと言うから。」

どんなに天候に恵まれても、ビルが邪魔して、富士山は見えなそうですが……。

残念ながら警察官に教えていただいた富士見通りも訪れてみましたが、全く富士山の見える気配はありませんでした。きっと、早朝に訪れれば見えるのでしょう。

気を取り直して、今回のメイン、富士塚巡りをしたいと思います。

富士塚とは江戸時代の人の富士山信仰に基づくもの。富士山まではるばる行くことは困難な時代でした。そこで、実際に富士山に参詣した人が石などを持ち帰るなどをして、富士山のミニチュア版を作りました。富士塚にお参りする事で、富士山に登るのと同じ御利益を受けられると考えたそうです。江戸時代に大流行をしたので、関東各地に富士塚が建てられましたが、21世紀においても当時の富士塚が都内各所に今も残っています。富士塚巡りは今回のテーマである『富士山』にピッタリです(そういえば、渋谷川沿いを走ったときに、鳩森八幡神社で富士塚に登りました)。

最初に訪れたのは富士見台駅からも近い江古田浅間神社。浅間神社は富士山を祀っている神社ですから、この神社も富士山との関連が深い神社です。境内はとてもきれいに清掃されて厳かな雰囲気が漂っています。



奥には、大きな富士塚がありますが、残念ながら立ち入り禁止。新年など指定された日だけご開帳とのことです。

次に訪れたのは豊島長崎神社。ここの富士塚は立派な形をしており、国の重要有形民俗文化財に指定されています。重要文化財だけに、予想通り、おいそれと中に入ることはできません。眺めるだけです。

まさか、富士塚が公園の先にあるとは思いませんでした。

あたりは民家が密集しており、ひっそりと佇んでいました。たまたま神社の後ろの家が取り壊されていたので、富士塚を真後ろから見ることができました。

さらに次の富士塚へ。池袋駅の人通りが多いエリアを抜けていきます。


池袋を抜けてきました。

ようやく辿り着いたのは護国寺です。ここは以前に、神田川ライドで通りかかったお寺です。今回は、護国寺そのものではなく、その横にある音羽富士が目当てです。

音羽冨士への案内板もあります。



ここは立ち入り自由で実際に富士塚に登ることができました。実際に一合目などと記載された石碑も綺麗に残っていました。ゆっくりと登って無事に頂上まで登り、山頂から眼下を見下ろすこともできました。とはいうものの、落ち葉で囲まれてしまっていますし、周りもビル群で、感動的な景色とは言い難いです。

護国寺の境内にも参拝しました。西日がとても綺麗に輝いていました。

次の目的地へと向かいます。東京都内を移動するのは自転車だと速いということを痛感します。ほんの数キロメートルいけば、次の目的地へ到着します。電車やバスを待っているうちに自転車なら目的地に到着できてしまう感じです。今回利用しているのはDAHON Deftar。10kg以下の重量ということもあり、ちょっとした上り坂もスイスイと進むことができます。


駒込富士神社。ここの富士塚は富士塚そのもに階段が設けられていました。急階段を上っていけば、簡単に山頂に辿り着けるのです。が、階段が急すぎて、恐る恐ると登る必要があります。


みてください、階段の斜度が壁のようでした。

夕暮れが迫ってきています。次に訪れる富士塚がおそらく最後になるでしょう。訪れたのは谷中富士。「谷根千」で有名になったエリアですが、ここにも知る人ぞ知る小さな小さな富士塚があります。もしかしたら日本で一番小さい富士塚かもしれません。

三浦坂にて。都内は坂と路地でいっぱいです。それを象徴するかのような細くて急な坂でした。

地主さんが家をリフォームしようとしたとき、富士塚を偶然に発見したそうです。本当に小さな富士塚ですが、綺麗に整備されていて趣を感じることができました。

ここで夕暮れ。体が冷え切って温めたいところです。「富士山をテーマにしたライドで体を温めたい。」といえば、訪れる場所はただひとつ。壮大にそびえる富士山を夜でも見ることができる場所が東京都内にはたくさんあります。

訪れたのは萩の湯。銭湯に入って身も心も温めることができました。ゆっくりと壁に描かれた大きな富士山を眺めながら今回の旅を振り返ることができました。

浴場の写真をおさめることはできないので、お店の人に頼み公式写真を使わせていただきました。奥に描かれている富士山はたいそう見事なものでした。銭湯絵師の田中みずき氏が描いたものとのことでした。絵画を眺めながら、今日のサイクリングを振り返りつつ湯船に浸かり体を温めるのはなんと至福の時間なのでしょう。

 
今回巡ったポイントと走行ルートです。同じ道を何度も往き来したところもありルートは簡略化していますが、走行記録を確認すると30km強でした。京成本線 日暮里駅から輪行して家路につきました。自転車散歩のスタートとゴールを異なる駅にすれば、コースの自由度は広がります。自転車を利用して少し足を延ばせば、新しい発見がたくさんあります。いきなり輪行ではなくご自宅や最寄駅から自転車散歩を始めてみるのも、いいかもしれません。


 

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今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回の自転車散歩はDeftarを利用。東京都内のような短いけれど、急な坂が多くある街では軽量でコンパクトになる自転車がピッタリです。その点、Deftarならば10速のギアと10kg以下の重量でおすすめの一台です。DAHONでは様々な折り畳み自転車(フォールディングバイク)をラインナップしていますが、走行機能と折りたたみ機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあった製品を選んでください。

DAHONでは様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載しています。更新時にはFacebookTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもぜひチェックしてみてください。これまでの記事一覧は、こちらでご覧いただけます。

 

*使用車体
 DAHON / Deftar(Color:アッシュブルー)2023年モデル

*この記事で紹介している情報は、2022年12月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。