2021年2月15日月曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【JR東日本 京葉線 八丁堀駅】

ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回は、JR東日本 京葉線 八丁堀駅からスタートします。



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八丁堀 / Hatchobori

いつも通勤で通う東京都。たくさんのビジネスマンが行き交う都内ですが、振り返ってみると、人通りの少ない都内はどのような感じなのでしょうか。今回は東京のど真ん中とも言える東京都中央区をサイクリング。普段ならスーツ姿で訪れる街へ、今回はカジュアルな格好で出かけてみました。折りたたみ自転車を電車に乗せて。スタートはJR東日本 京葉線 八丁堀駅です。

八丁堀駅は東京駅の隣。ここまでは電車を利用してきました。公共交通機関を利用して自転車を運ぶことを輪行(りんこう)といいます。サイクリングや旅行の行程の一部を自走せずに鉄道、船、飛行機、バスなどを利用するもので、遠くへ移動したり、時間を短縮することができます。

八丁堀駅は地下3階の深いところにある駅です。地上に出るまでに一苦労がありそうですが、今回利用したDAHONの車体はDove Plus。車体重量6.97kg、アクセサリを加えても7kgちょっとの軽量コンパクトな折り畳み自転車です。ヒョイと持ち上げて苦労なく、地上へ出ることができました。自転車を展開して、準備完了。とはいうものの、自転車散歩、あてもないサイクリングの始まりです。

ところで、そもそも、八丁堀という地名のどこから来ているのでしょうか。その由来は江戸時代に遡ります。当時、この辺りは水路(=堀)となっていたそうです。その堀の長さが八町(=約870メートル)ほどだったので、八町堀と呼ばれるようになり、時を経て「町」の字が「丁」になりました。明治時代には八丁堀は桜川と名前を変えましたが、やがて、昭和の高度経済成長期に桜川は埋め立てられ姿を消しました。それでも、八丁堀駅や桜川公園などの地名にこれまでの歴史を感じることができますね。

桜川公園は自転車禁止なので、入り口で撮影。川が埋め立てられて公園となった雰囲気がありませんか?

桜川の河口にあった稲荷橋。今では欄干を残すのみとなっています。

佃島 / Tsukudajima

佃島(つくだじま)へ向かってかかる橋が中央大橋。隅田川下流にかかる橋の一つで、開放的な場所です。平成時代が始まった頃、隅田川とフランス、パリのセーヌ川が友好河川となりました。それを記念して架けられた橋です。

東京スカイツリーもくっきりと見える撮影スポット。

中央大橋から見える東京スカイツリー。

中央大橋からの景色は開放的で気持ちいいです。

橋を渡ると、佃島。ここには東京唯一の住吉神社があります。大阪をはじめとして関西方面では身近な住吉神社ですが、関東では珍しく、東京ではここ佃島だけです。なぜ東京に一つだけ住吉神社があるのでしょうか。


徳川家康が、摂津国西成郡佃村(現・大阪市西淀川区佃)にある住吉神社に参拝したときに地元民が馳走してもてなしたそうです。一説によると、1582年の本能寺の変後に家康が大坂から出られずに苦労しているときに、佃村の漁師たちが船を出して助けたという話もあるそうです。いずれにしても、徳川家康と佃村の人には縁がありました。江戸幕府が始まった時に、江戸近海での特権的な漁業権を与えられた佃村の人たちが、この地に住むようになりました。よって、佃島と命名され、佃村の住吉神社の御神霊も奉遷祭祀されました。これが江戸の(東京の)住吉神社の始まりです。なお、その漁民が長期間保存できる食事として小魚を煮て保存食としました。それが今の佃煮の起源と言われています(諸説あります)。

昔の街並みとタワーマンションの融合が興味深い佃島です。

路地裏にも佃煮屋さんがあります。

月島 / Tsukishima

佃島の隣は月島(つきしま)です。月島の語源は築島ですから、ここは明治時代から造成が進んだ埋立地です。現在、島の西仲通りは、もんじゃストリートとして賑わいを見せています。どのもんじゃ焼き屋にしようかと悩んでしまうくらい、たくさんのもんじゃ焼き屋が立ち並んでいます。

こちらの公式サイトによると、月島もんじゃストリート加盟店は50店以上もあるようです。

月島はタワーマンションが立ち並び、観光地となったもんじゃストリートもありますが、この島の魅力は路地にあります。メインストリートから道を一つ入ると、昭和の下町にタイムスリップしたような地元民が生活する路地裏が続きます。車では絶対に来ることができない、自転車だからこそ、ふらりと立ち寄れるのでしょう。

月島の路地裏自転車散歩。人がいつ出てくるかわかりません。自転車は押して進みました。

オリンピック村 / Olympic Village

月島を抜けてさらに海辺を目指していくと、近代的で綺麗なマンションが立ち並ぶエリアとなります。しかしながら、人の気配が全く感じられないマンション群。車の通りもありません。

人通りがまったくないマンション群。

ここは東京オリンピックの選手村。新型コロナウイルスの影響で2020年開催予定だったオリンピックは延期となってしまいました。2021年に無事に開催されれば、この地は国際色豊かな人たちが行き交う場所となることでしょう。

オリンピック村の隣、豊海埠頭(とよみふとう)からはレインボーブリッジが綺麗にみえます。

勝鬨橋 / Kachidokibashi

豊海埠頭から戻ってくると、最初の橋が勝鬨橋(かちどきばし)です。月島と築地、銀座をつなぐ橋ですが、その歴史は明治時代に遡ります。当時から月島への往来は多く、1905年の日露戦争で旅順陥落勝利を契機として、勝鬨の渡しが設立されました。その後、このエリアのさらなる発展に伴い、1940年に橋がかけられます。ただし、船舶の往来もあったためにこの橋は可動橋(跳開橋)として設立されました。

勝鬨橋は国の重要文化財として保存されています。

令和時代においては跳開することはありません。しかし、橋の中央の歩道にも信号機が設置されているところから当時に思いを馳せることができます。跳開している様は、まるでエイエイオーと勝鬨をあげているように見えたのでしょうか?

勝鬨橋の使われなくなった信号。

勝鬨橋を渡ってすぐの左側(南側)は築地場外市場。現在、市場は豊洲に移動しましたが、場外市場は往年の賑わいを全く失っていません。「自転車停めてお寿司食べていけるよ〜」という客引きの声も聞こえてきます。築地場外市場で扱っているものは実にさまざま。刺身はいうまでもありませんが、卵焼き屋さん、食器屋さん、包丁屋さんなど様々なお店が所狭しと並んでいます。



カフェ休息 / River&Green Cafe

ここまでの道のりは約15km。ぶらぶらと走る自転車散歩を続けてきましたが、スタート地点のJR八丁堀駅まで戻ってきました。ちょっと休息。駅近くで明るいカフェを見つけておいたのです。稲荷橋跡の欄干を撮影したときに、すぐ後ろに控えていたカフェです。


気持ちよく店員さんが迎えてくれるカフェの名前はRiver&Green Cafe。「自家製サンドイッチソースと新鮮野菜をいっぱい使ったボリューミーなサンドイッチをメインにしたカフェ」と公式サイトに記載がありますが、その言葉に偽りのないお店でした。BLTA(ベーコン、レタス、トマト、アボガド)が挟まったサンドイッチをいただきましたが、野菜が新鮮でとても美味しく、またベーコンの旨味がしっかりと伝わってきます。サイクリングで疲れた体を癒してくれる味わいです。

店内はゆったりとスペースが確保されており、ベビーカーを押して入ることもできるような広さ(持ち込んでいませんが、折り畳み自転車なら邪魔にならないようなスペースも店内にありました)。それだけに、席数も限られており、すぐに満席となってしまいそうです。コーヒーを飲みながら、サンドイッチを堪能していると、お客さんがちょこちょこと訪れてきます。テイクアウト販売もしていて、車で遠方から来て購入されている方もおられました。

カフェのオーナーさんから近隣のおすすめスポットを聞きました。魅力的な場所をうかがったのですが、またの機会にすることに。今日は15kmの自転車散歩で心地よい疲労感と満足感でいっぱいです。ここから自宅までサイクリングとなると疲労で危険なのですが、折り畳み自転車なら輪行して帰宅することができます。自転車をサクッと折り畳み、今回の自転車散歩は終了となりました。

今回巡ったポイントと走行ルートです。約15kmの道のりは徒歩では厳しい距離で、車では駐車場所がありません。自転車だからできる、東京都内のサイクリングでした。




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今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回は利用したのはDAHONのDove Plusという自転車。シングルギアで14インチということで、スピードを出して長距離を走ることはできないかもしれませんが、6.97kgという軽さとコンパクトさは輪行にピッタリです。東京都内は信号も多く、いずれにしてもスピードをだすのが難しいです。それなら、軽量コンパクトな折り畳み自転車を持参して自転車散歩という休日の愉しみ方も良さそうです。DAHONでは様々な折り畳み自転車(フォールディングバイク)をラインナップしていますが、走行機能と折りたたみ機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあった製品を選んでください。

DAHONでは、様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載しています。更新時にはFacebookやTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」専用のInstagramアカウントもスタートしましたので、こちらもぜひチェックをお願いします。


*使用車体
 DAHON / Dove Plus(Color:ポリッシュ)2021年モデル

*この記事で紹介している情報は、2021年2月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや道を迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。