2023年7月7日金曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【JR東日本 中央線 国分寺駅】

ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回は、JR中央線と西武線の国分寺線・多摩湖線が乗り入れる国分寺駅からスタートします。


 

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今回の起点、国分寺駅は西武鉄道の駅としては最も古い駅の一つなのだとか。駅前には商業施設も立ち並び、平日でも人通りの絶えないにぎやかな街です。一緒に走るのは、クロモリの乗り味がやさしいBoardwalk D7。重量は12.5kgと、軽さ至上主義の筆者としては少し重く感じる車体ですが、ボタン付きのサムシフターやフェンダー&スタンドといったデイリーなスペックは街なかの散歩にぴったりです。


国分寺駅を背にして南に走ってみると、屋根に小さなしめ縄のついた石像を見つけました。ちょうど「不動橋」のお向かいです。

ゆるい坂道に面した「不動明王」の像。


 振り返ればこじんまりとした「ふどうばし」があります。橋のかかる川は「野川」。

由来を書いた看板によると、これは「石橋供養塔」だとのこと。おそらく橋の架け替えに合わせて1832年に造られたようで、「常に人に踏まれている石橋」を供養したものだそうです。疫病や災いが石橋を渡って村に入り込むのを防ぐ意味もあると書かれていましたが、「橋、いつも踏まれて大変だったよね」という気持ちで造ったのでしょうか……? さすが八百万の神の国、ほっこりします。江戸時代の人とは普通に話ができそうだな、などと思いながら先へ進みます。

野川には立派な鯉が泳いでいました。これ、錦鯉なのでは?

野川には鴨のつがいも泳いでいました。これはカルガモですよね。

ホタルを増やすため、そのエサとなるカワニナの保護活動が行われています。


不動橋から少し西へ行き、再び野川をまたぐ「緑橋」を渡ります。こんなに静かでコントロール下にあるように見える川も、大雨のときなどは侮ってはいけないようです。


国分寺エリアは時折仕事で訪ねることがあり、以前から、自然豊かでいいところだなと思っていました。それでもあくまでメインは仕事。目的が終わればせいぜいお茶して帰るぐらいだったのですが、今回ゆっくり走ってみたことで、これまでは気づかなかった「懐かしさ」を味わうことができました。季節の虫の声や住宅街のアップダウン、曲線的な小道など。ペダルをこいでいて感じる風も、緑のあるところではにおいや温度、湿度が違うように思います。空き地を彩る花に、思わず自転車を下りてシャッターを押しました。

子どもの頃に当たり前だと思っていたけれど、いつの間にか身近にはなくなっていて、でもそれが何なのかはわからないものーーそんな何かがあるような気がします、国分寺。

ゆらゆらと咲き誇る黄色い花、木杭や鉄線がなんともノスタルジック。「空き地」ってあまり見なくなりましたね。

国分寺を語るうえで外せないのが「国分寺崖線」です。筆者は「がいせん」という言葉も国分寺のおかげで覚えました。これは立川市から二子玉川の辺りまで続く「がけ地」のことで、国分寺市内では北西端から南東部を貫いています。がけの高低差に由来する坂道も多く、冒頭の写真も実はその一つ。武蔵野台地の関東ローム層に染み込んだ雨水ががけ地の下から湧き水となって現れ、この辺りは古くから湧水の地としても知られているのです。


さて、ここから「お鷹の道」に入っていきます。現地の看板によれば、ここは江戸時代後期、尾張徳川家の「御鷹場」として使われていたそうです。鷹狩りの地となったことから「崖線下の湧水を集めて野川にそそぐ清流沿いの小道はいつのころからか『お鷹の道』と呼ばれ」るようになったとのことで、この地の暮らしの歴史の長さを感じました。

インコだ!

「キィー」というか「ギチギチ」というか、賑やかな鳴き声に空を見上げると、電線に鮮やかな黄緑色のインコが止まっていました。絶対に日本の野鳥ではないカラーリングに、通りすがりのお姉さんも「あっちにもいますよ!」と興奮気味。全国で増えているという野生化のやつか、と調べてみると、どうやらワカケホンセイインコという種類のようです。南インドやスリランカなどが原産ですが「タカなど天敵のいない都市の環境に順応したのでは」という記事も見つかりました。かつて鷹狩りが行われていた地で増える、天竺から来た鳥ーーなんだか因果なものだな、と思ってしまいました。


こんなにかわいい橋もきちんと使用されています。


自転車は押して歩きましょう。地元の人と道を譲り合って進みます。


強い日差しを竹林が遮ってくれて、ほっと一息つくことができました。ゆっくり歩いていると、学校帰りの生徒たちとすれ違うこと幾度か。こんなすてきな道が通学路だなんて、ちょっとよすぎませんか? あまつさえ制服カップルもいました。これはもう、自分もここで青春を過ごした思い出を持っていることにしたいと思います。出身地を聞かれたら「横浜です」みたいに「国分寺です」って言おうっと。

引き寄せられずにはいられない訴求力。


うわー、これは毎日来たい!

「新鮮野菜」と書かれたのぼりを見つけて自転車を止めると、そこには野菜の無人販売所がありました。とれたてのパクチーなども置いてあって否が応でも胸は躍り、ぽっかりと静かな空間はもはやワンダーランド。

片っ端からいただきたいと思うものの、帰りの荷物が重くなってしまうのでそうもいかず……迷いに迷って、今夜の晩酌を想像しながらそら豆に決めました。

お金はここに入れればいいんだな。

これで200円というお得ぶり。後日、近所のスーパーでこれぐらいのパックが倍額で売っているのを見ました。

ほくほくで無人販売所を後にします。そのすぐ近くにあるのが、真姿の池(ますがたのいけ)弁財天です。




ときは平安時代。玉造小町さんという女性が病気になった際、国分寺の薬師如来のご利益で元気になり、元の姿に戻ったことから「真姿の池」という名がついたとのこと。玉造小町さん、きっと美女なのでしょうね。穏やかな水面は見るだけでも涼しげで、緑あふれる境内にふしぎな空気を醸し出しています。そしてこの神社の目の前には湧き水ポイントが。


都市化によって水の湧出量も減っているらしく、ここは貴重な湧水源の一つであるそうです。

タイミングによっては観光客で賑わうこともあるようですが、この日は地元の方が犬の散歩に来ていたぐらいで、ほとんど人影もなく静かでした。おかげでしばらく水を眺めたり触れてみたり、のんびり一息つくことができました。

このまま北上し、大きい道に抜けて帰る予定だったのですが、ここでリサーチ不足が露呈します。進行方向を振り仰げば、なかなかの石段が立ちはだかっているではありませんか。脇道もなく、これは自転車をかつぐか引き返すかしかありません。

お姉さんがゆっくりと上っていくのを見守るばかり。

少し呆然としつつ水分補給をしていると、地元のガイドさんらしき方が「自転車散歩ですか?」と声をかけてくれました。「輪行して来たんです」と答えると、ご自身も若い頃はロードバイクで富士山を登ったことなどを語ってくださり、自転車談義に花が咲きました。「線路の向こう側にある野川の源流は日立中央研究所の敷地内だけど、年に2回、一般公開されるんですよ。次は秋に来てみてくださいね」との有益な情報も。石段を迂回するための近道を教えてもらい、お礼を言って来た道を少し戻ります。

わっ、ビックリした。かわいい置物。

市のウェブサイトに「かつては5〜6月に見られたホタルは近年はほとんど見られない」とありました。保護活動が身を結ぶことを祈ります。

お鷹の道を抜けても、日暮れまでまだまだ時間はあります。国分寺にお参りして帰るのも一案だし、北上して「姿見の池」に行ってみるのもいいかもしれません。ただーー今はカバンの中のそら豆が気になって仕方ないのです。「早く茹でたほうがいいよ」「とれたての鮮度が落ちちゃうよ」と、背中側から豆たちがささやきかけてくる気がします。ここはもう、さっと電車に乗って最速でビールをキメてしまいましょう! 輪行ってこういうところが最高ですよね!

 

今回巡ったポイントと走行ルートです。距離は約1.5kmと短いながらも、収穫の多い自転車散歩でした。


 

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今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。DAHONでは様々な折り畳み自転車をラインナップしていますので、走行機能と折り畳み機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあったモデルを選んでください。

DAHONでは様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載しています。更新時にはFacebookTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもぜひチェックしてみてください。

 

*使用車体
 DAHON / Boardwalk D7(Color:グラナイトグレー)

*この記事で紹介している情報は、2023年6月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。