2022年7月7日木曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【JR東日本 中央・総武線 飯田橋駅】

 ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回はJR中央線からいつも見えている池?沼?前々から気になっていた場所です。JR 飯田橋駅からスタートします。


 

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JR 中央・総武線に乗っていると、四ツ谷駅から飯田橋駅の区間で水辺がずっと続きます。都会のど真ん中、なぜ水辺が広がっているのだろうか?と疑問に思ったことはありませんか。その理由を現地で探ろうとJR飯田橋駅に降り立ちました。

公共交通機関を利用して自転車を運ぶことを輪行(りんこう)といいます。サイクリングや旅行の行程の一部を自走せずに鉄道、船、飛行機、バスなどを利用するもので、遠くへ移動したり、時間を短縮することができます。

飯田橋駅では2021年7月に「エキュートエディション飯田橋」が西口にオープンしたばかり。その改築では、江戸時代からの石垣跡がけっこう出土したそうです。それも当然と言えば当然、飯田橋駅西口は、江戸時代の外濠沿いにあった牛込見附の跡地なのです。見附とは見張り所のこと。ほとんどの見附は濠に橋がかかったところにありました。内濠と外濠を合わせると見附は36以上の城門があったことにちなんで、江戸城三十六見附とも呼ばれています。

エキュートエディション飯田橋から牛込見附跡を眺めてみました。今は車、昔は人馬が通ったのかな。ちなみに、エキュートエディション飯田橋には、ちょっとした外濠跡解説ブースも設置されています。

牛込橋からは石垣跡が間近にそびえたちます。

中央線から見えた池のような水辺は江戸城外濠跡だったというわけです。外濠があった周囲をなぞるように走っているのが、現在の外堀通りです。そこで、今回は外堀通りにそって、江戸城の面影を探すことにしました。

江戸城外濠といえば、神田川もその一部。飯田橋駅から東に進めば神田川となりますが、そのルートは以前の自転車散歩で探検したところ。そこで、今回は反対側(西側)に進みます。

飯田橋駅近くのビル入口に使われている石も当時の石垣を再利用しているのでしょうか。


石垣跡の上から濠跡を見下ろしてみました。明治期に電車を通すには土地が必要でした。しかし、線路を通すのに十分な土地買収はなかなかできませんから、濠跡沿いに線路を走らせたのです。

ここは市ヶ谷駅近く。外堀通りを進むとお濠跡にぐっと近寄れるところもあります。

外堀通り沿いにしばらく進むと、木々が生い茂っている場所にたどり着きます。ここは外濠公園。名前の通り、外濠の一部から水を抜いて空壕とし、そこに少年野球場や公園を作りました。外濠の底にあたる場所です。周りは土手が高く迫り上がっています。よって、この公園を訪れるには必ず坂道を降りる必要があります。

四ツ谷駅側から外濠公園に入る道です。結構な坂道です。公園はもともと外濠底にありますので、訪れるには、必ず坂を登り降りする必要があるのです。

公園を抜けると、JR四ツ谷駅。四谷見附があった場所です。四ツ谷駅といえば上智大学。駅の先には上智大学のグラウンドが広がっています。上智大学のグラウンドがあるところは、周囲よりも土地が随分と下がります。もうお分かりでしょう。上智大学のグラウンドも江戸城外濠の跡地なのです。当時は真田濠と呼ばれていた場所で、真田家が中心となって開削した人口濠です。戦後、瓦礫処分に困っていた政府がこの地に瓦礫を集め、埋め立て、現在は上智大学とJRが跡地を利用しています。

真田濠の終わりは喰違見附跡です。ここは江戸城外濠で唯一の土橋。土手を作り、その上を橋として利用していた場所です。橋の右側と左側では、高さが異なり、濠をせき止めていました。今も道は片道1車線。なんとなく当時の面影を残しています。

喰違見附跡から上智大学グラウンドを撮影してみました。それにしても深い濠跡です。

喰違見附跡を抜けると、道は一気に下り坂となり、森の横を通って行きます。弁慶濠と呼ばれる濠跡で、江戸時代当時からの面影を色濃く残している地域です。

濠跡に沿って首都高速道路が展開されています。昭和の高度経済成長期に首都高速を大急ぎで造る必要がありました。東京オリンピックを開催するためです。そのため土地買収が必要だったのですが、そんな簡単に土地買収はできません。しかし、濠跡や川沿いであれば、ビルも建っていませんので、短時間で高速道路を作ることができます。そこで、川や濠跡に沿って首都高速が建てられたのでした。

弁慶濠の近くには、森林が残っています。東京都心とは思えない自然溢れるエリアですが、上を見上げると高速道路が走っています。東京らしい!?

坂を降りたところは赤坂見附。地下鉄の駅名にもなっていますが、江戸時代に見附があったことに由来します。赤坂見附の石垣はほとんど残ってないと思いきや、近くにできた紀尾井テラスという商業ビルから、石垣近くに寄って見学することができます。

自転車は入ることができませんが、今回持ってきたのはDove Plus。6.97 kg という軽さがウリの自転車です。素早く折りたたみ、輪行袋に入れて、肩に担ぎながら、遊歩道を進みました。

間近に迫る石垣。ここは歩行者専用の遊歩道です。自転車は駐輪場にとめるか、輪行袋に入れましょう。



赤坂見附からさらに外堀通り沿いを進みます。そうすると左手に見えてくるのが山王、つまり日枝神社のことです。溜池山王という地下鉄駅がありますが、山王とはこの日枝神社を指します。また、溜池は文字通り池があった場所で、外濠の一部となっていました。

日枝神社は山の王様といわれるだけあって、高台の上にあります。境内まで上がることも考えましたが……。ごめんなさい。お腹が減ってしまい、エネルギーがでませんでした。腹ごしらえをしようと、さらに外堀通りを進み、虎ノ門エリアで休息をとることにしました。

オープンテラスも考えましたが、Dove Plusのメリットを生かして折りたたみ、省庁ビルの地下街で官僚の人たちに混じりながらの昼ご飯です。

日枝神社は徳川幕府より庇護を受け、栄えてきました。その鳥居も迫力十分な大きさです。写っていない?この真上にそびえるようにあります!

裏から入ると稲荷神社の入り口があります。赤い鳥居が並んでいて、異空間へ入っていくような気分になります。

虎ノ門界隈のオフィスビルにあるカフェにて休息。シンガポール風のお店でコピ(甘いコンデンスミルクたっぷりのコーヒー)が疲れを癒してくれました。

虎ノ門ももちろん外濠沿いにあった城門の一つです。昔はこの門を通り抜ける道が東海道となっていたようです。確かに、現代でも虎ノ門駅のところは車通りが多いです。

界隈には外濠を思わせるものが全くないと思いきや、そんなことはありません。文部科学省の建物を再開発したとき、この辺りの外堀の跡となる石垣が見つかりました。さすが文部科学省。その場所は綺麗に整備され、当時の石垣の様子が詳しく解説されていました。

ビルの再開発で発見された石垣跡だそうです。省庁ビルの間に残されています。自転車は走行禁止エリアのため、警備員に確認して押して入りました。

上を見上げると高層ビル。

敷地に入ったすぐのところにも石垣がありました。その地下には「江戸城外堀跡 地下展示室」もあります。

文部科学省のすぐ目の前、虎ノ門駅へ。壁の色が途中から黒くなっています。黒いところは江戸時代は濠の水中。つまり虎ノ門駅は濠の中に作られた駅というわけですね。


ふと地図をみると、ビルの谷間に金刀比羅宮がありました。しかも、かなり古風です。

金比羅さんといえば、香川県。なぜ東京港区に金比羅さんがあるのでしょうか?調べてみれば、ここは丸亀藩(現在の香川県西部)の邸跡。何事も因果関係があるというわけです。

金比羅神社でお参りをすませ、ベンチで休んでいると、年配の男性に話しかけられました。DAHONの良さをさりげなくアピールして先へ進みます。

外堀通りは、虎ノ門を過ぎると新橋の方に向かいます。もう外濠の痕跡は残っていない?そんなことはありません。新橋から銀座に抜ける高架下がまさに外濠跡なのでした。高架下には現代ではお店が連なっています。このレストラン街に行くには、必ず一段下がります。つまり、外濠の底だったところが、今はレストラン街になっているのです。

外濠跡がレストラン街、日比谷OKUROJI。電車通り道、公園、グラウンドといろいろな用途に利用されていることに趣を感じますね。

レストラン街のすぐ横に、関係車両しか入ることができない道がありました。意味もなく、急に道が下がっています。この急斜面こそが外濠の跡であることを感じさせます。

外堀通りは、新橋を過ぎると、北上していきます。有楽町、数寄屋橋交差点です。もちろん数寄屋橋は江戸城外濠にかかる橋で、見附跡なのですが、残念ながら、ここは橋の面影さえありませんでした。

見附跡の代わりに?聳えていたのが、億の細道。宝くじ一等賞が最も出るということで有名な売り場へと続く道です。


数寄屋橋だけではありません。このように江戸時代当時の面影は全く残っていないけれど地名だけ残るということがあります。このまま外堀通りを北上していくと、鍛治橋、呉服橋と名付けられた交差点がありますが、すべて地名は外濠にかかっていた橋名に由来します。

さて、外堀通りを北上して東京駅をすぎると、常盤橋。もちろん外濠の見附跡ですが、ここは門構えが今も残っています。しかも、2021年に橋整備が終わり、遊歩道となりました。

橋を渡ると、両側に門構え跡があり、江戸時代に思いを馳せることができます。

高い石垣が見附の大きさを物語っています。

裏側には大河ドラマで有名になった渋沢栄一像があります。

外濠跡をぐるっと回ってきたところで、程よい疲労感。無理して事故にあっては大変です。サイクリング終了したくなったところで終了できるのが、折り畳み自転車の魅力です。目の前は東京駅。そこから、輪行して帰宅することにしました。


今回巡ったポイントと走行ルートです。約11kmの自転車散歩でした。


 

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今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回利用したDAHON Dove Plusの魅力はなんと言っても6.97kgという軽量さです。片手でひょいと持ち上げることもできる軽さで、都合の良いところだけサイクリング、臨機応変に折り畳んで手荷物とすることもできます。DAHONでは様々な折り畳み自転車をラインナップしていますので、走行機能と折り畳み機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあったモデルを選んでください。

DAHONでは様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載しています。更新時にはFacebookTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもぜひチェックしてみてください。

 

*使用車体
 DAHON / Dove Plus(Color:アイビー)2022年モデル

*この記事で紹介している情報は、2022年6月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。