2022年2月15日火曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【京成電鉄 京成本線 江戸川駅】

ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回は千葉県市川市、真間川沿いの景色を巡ります。 

 

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今回下車したのは京成線の江戸川駅です。千葉県市川市の真間川沿いをサイクリングするのが今回の目的。あえて、東京都の江戸川駅をスタート地点に選びました。(理由は後述)

駅を降りると、東京都内とは思えない、静かな空間に包まれていました。私といっしょに降りた人はなし。忘れ去られた駅であるかのようです。昭和にタイムスリップしたかのような雰囲気といえば、よいでしょうか。

今回の車体は、2021年からの新型Deftar。9.9kgの軽さが魅力的なモデルで、輪行の負担も少なかったです。

江戸川の河川敷に出れば、文字通りの雲一つない空。しかし、風が冷たく凍えてしまいそうです。

さっそく自転車散歩に出掛けましょう。江戸川をわたり、千葉県に入ります。それなら、最初から千葉県側の駅で下車すればよいのにとお思いかもしれません。実を言うと、江戸時代には、川を越えたところに関所がありました。だから、それになぞらえて、川を越えて、関所を通過しようという拘りです。

市川橋を渡って、千葉県へ。この市川橋の少し北側、市川関所跡のあるあたりに江戸川橋が架かっていたのですが、それ以前は市川の渡しがありました。江戸川橋がかけられたのは明治時代ですから、それまでは舟で渡っていました。当時に思いを馳せながら千葉県側へ入ります。

市川関所跡。案内によると、江戸時代は「入り鉄砲に出女」を取り締まるため、幕府役人は小岩(東京都)側に待機していたとのこと。市川側の関所は緊急事態のときに駆けつけるのが主な役目だったようです。

関所跡地から目的の真間川河口(つまり江戸川との合流地点)はすぐそこです。しかし、冬空の気持ちいい晴天に恵まれたので、しばらく江戸川沿いを北上することにしました。気分が赴くままに進んでこそ、自転車散歩です。京成線の高架下を潜って、しばらく進むと、以前の船着場跡に到着しました。海から14.75km地点。ここは江戸川の幅が最も広くなるところで、湾になっているので、昼夜問わず、江戸川の素敵な景色を撮影することができるポイントです。いつもは釣りをしている人もたくさんいますが、今日は風が冷たいからか、人影がありません。


風に吹かれて、水面がキラキラと輝いていました。

ほぼ同様の位置から、別日に撮影しました。東京スカイツリーの真上に太陽が落ちていきます。

晴天に恵まれたので、高台に登れば、富士山もくっきり見えるかもしれません。海から14.75km地点の後ろ側は、里見公園です。市川市で、最も標高が高い景勝地としても有名です。公園を目指して、急な坂を登りました。DAHON Deftarは軽量であり、8速を有していますので、急坂でもギアを軽くすることでスイスイと登ることができます。

里見公園内は自転車乗り入れ禁止なので、駐輪場に停めて、しばし里見公園内を散策します。公園からの景色を楽しめる展望台のような箇所がありました。雲が少し出ていましたが、富士山を背景に東京スカイツリーの撮影をすることができました。

富士山が雲にかかっていますが、確認できるでしょうか。


里見公園はところどころに石垣の跡があります。ここは国府台城址でもあり、戦国時代、国府台合戦の舞台になった場所です。江戸時代には、江戸城が見えてしまうという理由で廃城とされたそうです。

里見公園をあとにして、真間川の流域へ足を向けます。その途中で通るエリアでは、国府台病院、東京医科歯科大学、千葉商科大学、和洋女子大学、市川スポーツセンターと大きな土地を確保している施設が続きます。この界隈は学園エリア、戦前は陸軍施設、さらにその前は下総国の国府があった場所です。古来から人が集まる場所といえるでしょう。

下総国府跡の記念碑は市川スポーツセンター内にあります。正確な所在地は諸説あるようですが、おおむねこの辺りのようです。

坂を下って、真間川へ到着。すると、弁財天を発見しました。浮島弁財天は真間川のほとりに鎮座しています。昔、このあたりは入江になっていて、海の一部だったようです。その後の水面上昇に伴い、海だったエリアは真間川流域の平地となりましたが、従来からの土地は高台にあるというのが特徴です。


浮島弁財天。名前にある通り、古代では「浮島」にあった弁財天。入江に浮かぶ島に橋がかかっていて、その橋を越えないと弁財天に訪れることができなかったようです。

浮島弁財天近くで合わせて寄り道をしたのが、手児奈霊堂です。とても立派な寺社となっています。同じ敷地内には神社と沼地がありました。

手児奈は万葉集でも詠われた女性の名前です。手児奈は美人で、求婚をする男性がたくさんいました。あまりの多さに精神的に追い詰められて、入水自殺をはかってしまったそうです。その手児奈を慰霊するために建設されたのが、手児奈霊堂です。

霊堂の横には、沼がありました。この辺りが湿地帯だった名残でしょうか。それとも、手児奈が入水した場所でしょうか。

真間川の上流を目指してサイクリングを続けます。真間川は低地を流れていますが、川沿いには民家が続いています。中には、高級住宅街もあり、豪邸を眺めながらのサイクリングとなります。キョロキョロしていると危ないので、気をつけてすすまないといけません。

途中、東京外環道に道を遮られてしまいます。それでも、すぐに迂回路が見つかり一安心。

東京外環道沿いにはサイクリングレーンがあります。いつか、この道も走ってみたいです。


真間川中流域、須和田橋近くで撮影。いかにも住宅地を流れる川ですね。

真間川上流域に差し掛かり、川幅も細くなってきました。近くには宮久保商店街という時代を感じさせる商店街にぶらりと立ち寄りました。


宮久保商店街。電車でアクセスできるようなところではありません。駐車場もたくさんあるわけではありません。それでも存続しているのは、本当に地元の人に愛されているからでしょう。

これまで、坂道を越えたりもしてきたので、小腹が空きました。ちょっと休息したいところです。

今回は、宮久保商店街にある越後屋さんでどら焼きを購入しました。ポケットにしまいこんで、真間川のほとりで食べます。餡子がこぼれんばかりに入っているどら焼きは、視覚的にも空腹感を満たしてくれます。甘すぎずにさっぱりとした味で、後半のサイクリングにむけてのエネルギー充電!


しかし、ふと川を覗くと、違和感がありました。なんと川の流れが逆流しているのです。ここまで、河口から上流を目指して進んできたはずでしたが、川の流れが、下流から上流になっています。あきらかに不自然です。スマホを取り出して調べてみると、真間川の下流は2つあるようです。一つはこれまでサイクリングをしてきた流域エリア。もう一つは、今いる宮久保エリアを上流として、これまで進んできたのと反対側の東京湾に直接注いでいるとのこと。こちらは治水工事で新しくつくられた放水路のような位置付け。流れが2つあるのは実に珍しい川です!

真間川を東京湾方向にどんどん下っていく前に、先ほど、どら焼きを食べながら地図を確認したら、この付近に評価の高い神社を見つけました。寄り道をしてみることに。

しかし、神社を探しながら走っていてもなかなか見つかりません。地図では近くにあるはずなのですが……。ぐるぐる走って迷子のようになってようやく見つけた神社への入口。なんと神社は崖の上にありました。

八幡神社への入口。

高台にある八幡神社からの景色はけっこういい感じです。真間川は低地を流れていて、川より北側に進むと必ず斜面になるのが、地形的特徴だとわかりました。

八幡神社から道を下って、真間川下りの旅路に戻ります。真間川の面白いところは1kmくらい走ると、雰囲気が変わるところ。小川沿いを走っていると思いきや、すぐに街中の大きな川、そして畑の中を走ると景色が目まぐるしく変化するので、走っていて飽きません。

小川を進みましたが、すぐに街中の川へと風貌が変わっていきます。


途中に八幡餃子というお店を発見。24時間営業で無人というのが今流行りですね。


東西線の手前にて。住宅地を流れる川という趣です。ふと、写真左側をみると、暗渠が続いています。

京葉道路の高架をくぐると、東京湾も近くなってきます。道もオフロードになります。川辺には無数の船が並んでいます。どのような用途で利用されている船なのか、ちょっと気になります。レジャーボートなのでしょうか。




いよいよ真間川沿いのサイクリングもフィナーレ。東京湾との境にある水門にたどり着きました。

カメラのフレームに収まり切らない大きな水門で驚き。水門近くは工場も多く、これまでみてきた真間川とまたしても雰囲気が異なります。

水門のある地点から東京湾を眺めつつ、近くにある二俣新町駅から輪行してサイクリングを終了としました。

水門から東京湾を眺めました。ついさっきは小川だったのに景色の変化に驚いてしまいますね。

スタートとゴールが同じ駅でなくてもよいのが、輪行を利用したサイクリングの魅力です。疲れたら、そこで終了できます。

 

今回巡ったポイントと走行ルートです。真間川だけであれば、10km弱ですが、いろいろと寄り道をしたので、20kmほど走りました。川沿いは平坦ですが、ちょっと川から北側に離れると、急斜面が多いのが特徴です。9.9kgで8速というDeftarの性能に助けられて、走り切ることができました。上流付近に位置する宮久保エリアは桜の季節にもう一度走ってみたいと感じさせる場所です。自分だけのお気に入りのスポットを探してみるのもきっと楽しいことでしょう。



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今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?真間川流域は市中を流れるありふれた川に見えるかもしれませんが、今回紹介したように、歴史的な場所もあり、都市開発の跡を伺えたりと色々な顔をもった川で、サイクリングをゆっくりするのが楽しい場所です。観光地ではなくても自分なりの気付きや感動があれば、知っているつもりだった地域でも走ると案外楽しいものです。日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回利用したDAHON(ダホン)のDeftarは、軽量さが売りのモデルです。皆さんもDAHONの折り畳み自転車(フォールディングバイク)を持参して、自転車散歩という休日の愉しみはいかがでしょうか。DAHONでは様々な折り畳み自転車をラインナップしていますが、走行機能と折りたたみ機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあった製品を選んでください。

DAHONでは様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載しています。更新時にはFacebookやTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもぜひチェックしてみてください。

 

*使用車体
 DAHON / Deftar(Color:アッシュブルー)2022年モデル

*この記事で紹介している情報は、2022年2月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。