2021年11月1日月曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【JR東日本 外房線 上総一ノ宮駅】

 ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回はいつもより足を伸ばしてJR東日本 外房線 上総一ノ宮駅まで輪行し、50kmを超えるルートを巡ります。



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皆さんは千葉県と言うと、どのようなイメージを持っているでしょうか。東京ディズニーリゾートのある浦安市でしょうか。新都心と言われる幕張メッセ界隈でしょうか。それとも成田空港でしょうか。実を言うと、千葉県は海景色も山景色も広がる自然いっぱいの魅力溢れた県です。

以前から、ずっと自転車で訪れたいと思い焦がれていたのが、千葉県九十九里、外房エリア。ゆっくり起きた予定の無い日の朝、天気も良さそう。今日はもしかしたら、思いを現実にするチャンスかも。「思い立ったが、吉日」と意を決して、折り畳み自転車DAHON Speed RBとともに列車に乗って、出かけてみます。


起点は上総一ノ宮駅

降り立った駅はJR外房線の上総一ノ宮駅。もし東京から日帰りで訪れるのは難しく、宿泊旅行になってしまうと考えているとしたら、もったいないです。千葉県外房は、東京駅から、わずか90分ちょっとで到着します。しかも快速に乗ることができれば、追加料金なし、乗り換えなしのノンストップで行くことができます。これなら、日帰りで訪れることも可能ではないでしょうか。東京から上総一ノ宮までは電車で移動です。自転車は折り畳み、専用の袋に入れて電車に乗せます。このような移動を輪行といい、特別追加料金は特に必要ありません。


上総一ノ宮駅があるのは一宮町。以前からサーファーの間では有名な町でしたが、先日行われた東京オリンピック2020でサーフィン会場となり、知名度は一気に上がりました。一宮町は、サーフィンの町だけあって、行く人々がサーファーの格好をしていたり、お店はサーファーを相手にしているところが非常に多く見られます。サーファー向けの店は同じアウトドア系として自転車とも相性が良いので、覗いてみると楽しいです。

海岸に向かう途中で早速素敵な景色を見つけました。遠くまで広がる田園風景がずっと続いています。初秋の千葉県では、すでに稲刈りが終わり、新米が販売され始めています。



一宮海岸に到着。予想通り、サーファーの方が波打ち際で遊んでいます。秋晴れに恵まれたので、かなりの人出。サーフィンスポットだけあって、波打ち際の風が気持ちいいです。



太平洋岸自転車道から大原漁港へ

一宮海岸から南下していきます。この区間は太平洋岸自転車道の一部。このルートは千葉県銚子市から和歌山県までを結ぶ全長1,400kmのナショナルサイクルルートです。国が指定しているルートなので、ナビもあり、しっかりと舗装された道もあります。

オリンピック会場になった釣ヶ崎海岸。会場は後片付けのため、まだ工事中でした。

ナビに従いどんどんと進んでいくと、国道沿いを外れて、突然田舎道に進むことに。「本当にこの道で正しいのかな」と心配になりながらも進んでいくと、突然前方に海の景色が広がります。

ここは穴場スポットなのでしょうか。オリンピックのサーフィン会場で使われた釣ヶ崎海岸のすぐ横ですが、サーファーがほとんどいません。静かな波音が聞こえてきます。大人気のサーフィンスポットのすぐ横に静かな海岸。このような対比を楽しめるのは自転車旅だからこそ、偶然に出会えます。すでに満足感でいっぱいです。

帰宅後に確認したのですが、和泉浦と言うそうです。ここまでのサイクリングですでに15kmほど走りました。休息所を見つけたので、ここでしばらく休憩。波音に包まれて、癒されていきます。空を見上げれば、青空。秋晴れですが、今日は暑くなりそうです。

自転車道のナビに従って南下していきます。道は常に海岸沿いなので、これでもかと海景色を堪能し「もう海景色お腹いっぱい」と思ったところで、大原漁港に到着です。



漁港は、磯の香りが広がっています。ここで訪れたかったのは平和の鐘というモニュメント。しかし、これを見つけるのに一苦労です。手元のスマホで表示されているナビでは近くにあるとのことですが、あっちウロウロこっちウロウロ。なかなか入り口が見つかりません。


やっと見つけた平和の鐘。なんと階段を上がった高台にあるとは!ここまで来たからには行くしかありません。自転車を近くに停めてから、階段を一段一段上っていきます。

聞くところによると、この鐘は第二次世界大戦後の占領下で、アメリカによって回収されてしまいました。しかし、アメリカで、偶然その鐘を見つけた方が「日本に返して欲しい」と頼み込み、太平洋を渡って、またこの日本に戻ってきました。太平洋を横断したことを記念し、平和の鐘と名付けられ日米友好のシンボルとなっています。


いすみ鉄道沿線を行く

大原は漁港としても有名な場所ですが、実はいすみ鉄道の発着駅でもあります。今や、観光列車として一躍有名になったいすみ鉄道。サイクルトレインとして、自転車を輪行袋に入れないでも電車に乗せることができます。しかし、今回はいすみ鉄道を利用せず、沿線をサイクリングします。運が良ければ、いすみ鉄道がやってくるのを写真に収めることができるのではないか?と淡い期待を抱きながらペダルを回します。

国道をしばらく進むと、道少し外れたところに謎の鳥居が佇んでいます。国道整備にともない、トンネルが一つ廃道となっています。その横にひっそりと佇む神社案内板を読むと古戦場跡と記されています。戦死してしまった兵士の鎮魂のために造られた神社なのでしょうか。自転車を止めて、少しだけ中に進んでみましたが、蜘蛛の巣だらけで先に進むことができません。ひさしく人が訪れていないのか、昼間でも少し怖さを感じる暗さです。来た道を引き返しましょう。


踏切警告音が聞こえてきます。つまり、電車が来る合図。いすみ鉄道は1時間に1本、時間帯によっては2時間に1本ですから、偶然の出会いに大満足です。

この辺りは鉄道撮影ファンにとって有名なようで、何人もの人が望遠レンズを構えていました。彼らの邪魔にならないように踏切を背景としました。

慌てて列車を撮影。写真はちょっとぶれてしまったかもしれません。


ところで、いすみ鉄道沿線には、パワースポットとして有名な国吉神社があります。この神社に「訪れたい訪れたい」とずっと考えていました。

国吉神社にお参りをすれば、幸運に恵まれたと評判です。この神社にお参りすることで、いすみ鉄道が繁盛するようになったといすみ鉄道前社長も述べておられます。

国吉神社の隣には、出雲大社の分社があります。どちらか一つだけにお参りをするともう一人の神様がいじけてしまうそうですので、合わせてお参りを済ませます。「毎日元気にサ。。。。。」おっと、お祈りの内容を話すと実現できなくなってしまいますから、秘密にさせてくださいね。


大多喜は房総の小江戸、本多忠勝の町

さらに鉄道沿いに進んでいくと、いよいよ山深くなってきます。途中で何度も目にする夷隅川ですが、結構急な流れで、下流域とは全く違うことに驚きます。


川を眺めながら、サイクリングをしていくと、急に江戸時代にタイムスリップしたような街並みに入ります。ここは房総の小江戸として取り上げられている大多喜町。町全体で小江戸を演出しようとしっかりと整備されているのが印象的です。

小学校の入り口にも趣があります。このようなところで学んだら歴史好きになること間違いなしではないでしょうか。いや、むしろこういう環境で学んでみたいと思います。

大多喜は徳川四天王で有名な本多忠勝が居城としていました。江戸初期、これより南に領地を持つ里見氏を牽制するために本多忠勝がこの地に封じられたのです。街は本多忠勝をNHK大河ドラマで取り上げようと盛り上がっていましたが、その日がくると、観光客で溢れてしまいそうです。

山深い中をサイクリングしてきたので、ベンチに座ってしばらく休憩です。休憩ついでに、いすみ鉄道がやってくるのを再度待ちます。ここから写真を撮れば夷隅川、いすみ鉄道、そして大多喜城と3つがコラボした写真を撮ることができます。写真の出来栄え、いかがでしょうか。


本多忠勝像を発見しました。街全体で徳川四天王を応援しているのでしょう。


牧場のジェラートに、道の駅の温泉に

サイクリングもいよいよ後半戦に入ります。ここからはさらに山道になりそうですが、Spped RBの性能を信じて進みます。今日のような残暑の日にぴったりな場所があります。牧場で食べるジェラートです。しかし、牧場手前で信じられないような激坂が登場します。60kmサイクリングをしてきてからの激坂です。ハァハァと息を切らせ登っていきます。聞こえてくるのはチェーンの音と自分の息だけ。でも、ここまで来たからには後戻りはできません。溶けそうなジェラートを堪能する光景を脳裏に浮かべながらペダリング!


今回の車体がSpeed RBで助かったーぁ!この自転車はインナーギアも備えていて、ドロップハンドルでもあり、まるでロードバイク。予想もしないヒルクライムでしたが、自転車の性能に助けられ、何とか登っていけます。


辿り着いたのは高秀牧場です。山景色を眺めながら食べるジェラートは期待通りの味で、元気を取り戻すことができました。ひんやりとした味と濃厚な甘さが口に広がるものでした。牛たちも祝福してくれている気がしました。(いや、そんなことはない)



一宮町に戻る前に寄り道をしたいのが睦沢町です。ここに来たからには町の中心地である、つどいの郷道の駅むつざわに訪れるべきでしょう。道の駅といえば、地域の物産を取り扱う、また地域の素材を扱い、地産地消のレストランがあるという印象があります。しかし、道の駅むつざわは、それだけに留まりません。なんと温泉があるのです。

ジェラートで元気を取り戻しましたとはいえ、ここまでのサイクリングで今日はすでに結構な距離を走っています。温泉にゆったりと浸かれば、疲れもリフレッシュです。露天風呂も備わっており、睦沢の風に吹かれてゆったりと休息をします。

道の駅を訪れると、町民が潤いをもって生活することができるのをアピールしているのを感じることができます。いわゆるウェルビーイングを訴えている道の駅です。


温泉からあがって外に出ると、いつのまにか外は夕焼け景色が広がっています。道は下り基調ですが、安全運転を心がけてペダルを踏みます。



上総一ノ宮駅に帰着

次の目的地は上総一ノ宮駅近くの玉前神社です。この神社は上総の国の一宮となっています。関東屈指のパワースポットとして有名な理由はレイラインと呼ばれる線上にあることが理由です。春分の日と秋分の日は九十九里から上る日の出が神社を通り抜けて、その光の線上には富士山、琵琶湖、出雲大社が位置しているのです。自転車を停めて、とても神秘的な境内に進みます。


駅へ向かう前に、最後の訪問地として角八本店に寄りました。老舗和菓子店ですが、みかん大福が絶品なのです。みかんが一つ丸ごと入っている大福です。甘すぎず、もちもちとした食感と合わさって、思わず笑みがこぼれます。



上総一ノ宮駅に着くころにはぴったりと夕焼けの時間でした。この日の安全サイクリングを祝ってくれたのでしょうか。一宮川から眺める夕焼けが本当に今日のハイライトとなりました。


後は列車に乗って帰るだけです。疲れた状態で夜道を自宅までサイクリングしないで済みます。これが折り畳み自転車の素晴らしいところです。簡単に折りたたみ、袋に入れ、後は電車が来るのを待つばかり。今日も1日お疲れ様でした。また明日から頑張りましょう。



今回巡ったポイントと走行ルートです。50kmを超える、いつもより長い自転車散歩でした。




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今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?今までは都心部が中心でしたが、今回は、輪行を利用して、いつもより足を伸ばして日帰り旅行をしました。日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回利用したDAHON Speed RBは長距離サイクリングをすることができる頼もしい相棒です。皆さんもDAHONの折り畳み自転車(フォールディングバイク)を持参して、自転車散歩という休日の愉しみはいかがでしょうか。DAHONでは様々な折り畳み自転車をラインナップしていますが、走行機能と折りたたみ機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあった製品を選んでください。

DAHONでは様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載しています。更新時にはFacebookやTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもぜひチェックしてみてください。


*使用車体
 DAHON / Speed RB(Color:メタル)2021年モデル

*この記事で紹介している情報は、2021年10月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。