ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。今回は京浜急行電鉄
本線 馬堀海岸駅からスタートし、観音埼灯台周辺のポタリングスポットを巡ります。
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大阪や名古屋に住んでいる方はもちろん、神奈川県に住んでいる人でも知らない人の方が多い(地元の方、すみません!)馬堀海岸駅にDAHON
Dove
Plus片手に降り立ったのは、2月15日水曜日の10時少し前。天気予報の「快晴」を信じてやってきたものの、残念ながら横須賀の空は薄曇り。今回の自転車散歩のお目当ては観音埼灯台。灯台は青空が似合うのになぁと、ぼそぼそひとりごとを言いながら人通りも車通りもほとんどない駅前でDove
Plusをテキパキ組み立て、さあ、それでは観音崎周辺ポタリングに出かけてみたいと思います。
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馬堀海岸駅。所在地は神奈川県横須賀市馬堀3丁目。読み方は、「うまぼりかいがん」ではなく「まぼりかいがん」です。昭和30年代中ごろまで、駅前に馬堀海岸海水浴場が広がっていたのが、駅名の由来だそうです。その後埋め立てと宅地化が進み、現在の海岸線は駅から約400メートル北側に移動しています。
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馬堀海岸駅から北へ走るとすぐに現在の馬堀海岸に突き当たります。海岸沿いは遊歩道として整備されていますが、残念ながら自転車の乗り入れは禁止です。
遊歩道を自転車で走ることはできないので、遊歩道手前の国道16号線を観音崎方面に向かって走ります。この道もなかなか走り心地の良い道です。
海沿いの道をしばらく走ると、縁結びや恋愛成就のパワースポットとして有名な走水(はしりみず)神社に到着。平日の午前中にもかかわらず、絶えることなく参拝者が訪れていました。
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水色の鳥居が特徴的な走水神社。
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走水神社を参拝後、ふたたび海沿いの道を走り出すと、右側に全面ガラス張りの建物が見えてきます。建築マニアの間でも有名な横須賀美術館です。常設展や企画展を見るのは有料ですが、外から建物を見たり、ミュージアムショップの中を見学したりするのは無料です。自転車をとめて、敷地の中を散策してみたいと思います。
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小高い丘の上に建てられた横須賀美術館。メインの展示ホールは丘を掘り下げた地下1階にあり、屋上からの光が地下まで降り注ぐ構造になっています。
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海の方に突き出た建物は「谷内六郎館」です。故谷内六郎氏は、昭和31年の創刊時から週刊新潮の表紙絵を26年間描き続けた作家さんで、横須賀市にアトリエを構えていました。谷内六郎館には、週刊新潮の表紙絵の原画がたくさん展示されています。
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立派な駐輪場が完備されています。自転車乗りに優しい美術館です。
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横須賀美術館のエントランス。通路を進むと左側にイタリアンレストラン「アクアマーレ」があり、その先にメイン展示ホールへの入口があります。
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美術館の前には芝生の広場が、その向こうには東京湾が広がります。
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ミュージアムショップで購入した谷内六郎氏のポストカード。何十種類もありましたが、今回のポタリングの目当てのひとつが灯台なので、灯台の絵柄のものを2つ買いました。横須賀に住んでいた作家さんなので、絵の中の灯台は観音埼灯台だと思うのですが、みなさんはどう思われますか?(このブログの一番上の写真と見比べてください。てっぺんの形がそっくりな気がします)
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観音埼灯台へは、横須賀美術館の裏手の細い道を上がっていくのが近道。のんびり自転車を押しながら上っていくと、横須賀美術館の屋上広場を発見!芝生の手前に自転車を止めて、どんな具合か見てきます。
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横須賀美術館の屋上広場。無料で入れます。正面の小さな箱型の建物は美術館の2階で、ここから1階に下りていくことができます。
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屋上広場から見た東京湾。正面にかすかに見えるのは房総半島の富津岬。観音崎と富津岬にはさまれた東京湾入口のキュッと狭まった海域を浦賀水道といいます。幅6.5kmの狭い海域を1日500隻以上の船舶が行き来する、世界でも有数の海上交通路です。
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横須賀美術館の屋上広場を後にして、観音埼灯台へ向かいます。ちなみに横須賀美術館の裏手から観音埼灯台へは観音崎公園という大きな公園の中を進みます。公園内は、自転車に乗るのはダメだけど、手で押して歩くのはOKということなので、ルールをしっかり守り、自転車を押して向かいます。
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2月なのに緑の多い観音崎公園。癒されます。
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自転車乗り入れ禁止でなくて良かった。
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観音崎公園内にあるレンガ造りの廃墟のような大きな建造物。明治29年に造られた「三軒家砲台跡」です。首都東京を外国船から守るために造られた戦争遺跡で、観音崎周辺にはこのような砲台跡がたくさん残されています。
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この写真の建物は司令所だったそうです。
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加砲というのは加農砲の略称で、加農砲はキャノン砲の当て字です。江戸時代末期から明治時代初期まで、軍備を外国から輸入していた名残がここにあります。
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司令所跡とDAHON Dove
Plus。長手(レンガの長辺)だけの段と、小口(レンガの短辺)だけの段を一段おきに積むイギリス積みが採用されています。
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加砲(砲台)のあった場所。写真の真ん中あたりに砲台があったそうです。
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砲台を囲む壁面が一部くりぬかれています。実はこれ、地下の弾薬庫との通信用の孔(あな)だそうです。明治時代ですから通信手段はもちろん「大声」です。
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地下弾薬庫への通路。126年前のイギリス積みのレンガ壁がそのままきれいに残っています。写真左側の弾薬庫への入口はコンクリートで塞がれています。
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三軒家砲台跡から自転車を押し歩くこと約15分。お目当ての観音埼灯台に到着しました。日本全国に灯台は約3300基あるのですが、灯台の中に入って上までのぼれる、いわゆる参観灯台は16基だけ。観音埼灯台はその参観灯台のひとつです。というわけで、大人300円の参観寄付金を支払って、早速上ってみたいと思います。
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出発時の曇天がいつのまにか快晴に!灯台はやっぱり青空が似合います!
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白色八角形、コンクリート造の観音埼灯台。現在の灯台は、大正14年に建てられた三代目です。明治2年に建てられた初代観音埼灯台は、日本で最初に建てられた洋式灯台だったそうです。
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灯台内部。狭いらせん階段をのぼっていくと、青い額縁のような展望デッキへの出入口が見えてきます。
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展望デッキから見た東京湾浦賀水道。真正面に千葉県の富津岬が見えます。
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観音埼灯台の7層フレネルレンズ。現役で稼働している灯台レンズを手の届く距離で見られるのも観音埼灯台の魅力のひとつです。
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ここで少しだけ今回知った灯台関係のマメ知識を紹介しておくと、灯台の数え方は1基2基、もしくは1灯2灯だそうです。後者の方がなんだか少しカッコいい気がします。
それと前々から不思議に思っていたのが、なぜ灯台名の中の「さき」は「崎」ではなく「埼」なのか?今回の観音埼灯台も灯台名は観音埼ですが、灯台のある地名は観音崎です。他にも静岡県の御前崎市にある灯台は御前埼灯台です。調べたところ、「埼」という漢字は、海から見て陸地が海に突き出た地形を表す言葉で、「崎」は逆に同じ地形を陸から見た様子を表す漢字だそうです。灯台は海図に記載される施設で、海図はいつも海の上から陸地を見ている海軍(現在は海上保安庁)が作る地図。それゆえ灯台の名称には「埼」が使われることが多いそうです。
灯台の話はこれぐらいにして、自転車散歩に戻りたいと思います。下の写真は、観音埼灯台のすぐ横にある北門第一砲台跡。こちらのレンガは先ほどの三軒家砲台跡と違って、同じ段にレンガの長手(レンガの長辺)と小口(レンガの短辺)を交互に並べるフランス積みが採用されています。
観音崎公園を出て、海沿いの道を浦賀方面に向かいます。ここからしばらくは、海風に吹かれながらの快適なポタリングロードが続きます。
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写真の砂浜はたたら浜。東京湾とは思えない水のきれいな砂浜です。
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しばらく走ると全部で36号棟まである大きな団地が現れます。県営浦賀かもめ団地です。オーシャンビューの景観抜群の団地です。かもめ団地という名前もステキです。
団地のすぐ横にある船着き場では、地元のお母さんたちが採れたてのワカメを干していました。ちなみにこのワカメは沖の方の養殖場で、今朝採ってきたばかりだそうです。むせるような潮の香りが周囲に漂っていました。
かもめ団地から浦賀港の方に向かって少し走ると東叶神社が見えてきます。浦賀港は、幅約200メートル、奥行き600メートルほどの運河のような港で、その細長い浦賀港を挟むように東と西、ふたつの叶神社が建っています。西側の叶神社で買った勾玉を、東の叶神社で買ったお守り袋に入れると願い事が叶うそうです。
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東叶神社。後ろの小高い山は浦賀城跡。
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東叶神社から西叶神社へは、浦賀の渡しという渡し船に乗って行きたいと思います。下の写真は東渡船場。浦賀の渡しの航路は、浦賀海道という正式名称があり、横須賀市の市道2073号線として認定されています。全国でも珍しい海上の市道です。
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小さな蔵のような建物が待合室になっています。
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呼び出しボタンを押すと5分くらいで迎えに来てくれます。就航は朝7時から夕方の17時まで。12時から13時まではお昼休みです。
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船着き場で乗船を待つDAHON Dove Plusと、どこからともなく現れた渡し船。
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船上のDAHON Dove
Plus。甲板の上にはちゃんと自転車止めがあり、船長さんがロープで結わえてくれました。
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船上から見た浦賀港の街並み。江戸時代末期、この港にペリーが黒船でやってきて、そこから激動の明治維新が始まりました。
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わずか3分ほどで対岸に到着。
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渡し船の愛宕丸(あたごまる)。すぐどこかに去っていきました。
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西叶神社に到着。西側の渡船場のすぐ近くにあります。
西叶神社から浦賀駅までは自転車で5分くらいです。浦賀駅は京浜急行電鉄本線の終点で、横浜駅から36分、東京の品川駅から54分の距離にあります。当初、この浦賀駅で今回の自転車散歩を終える予定でしたが、近くに素晴らしい喫茶店があるという情報をGoogleマップで知り、最後にそちらに寄ってから帰りたいと思います。
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浦賀駅の駅前。スタートした馬堀海岸駅のおとなりの駅です。
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Googleマップでたまたま発見した喫茶店「リバーストーン」。浦賀駅からは自転車で10分ほどですが、途中かなりの急坂があるので、自転車を降りて押しました。(平らな回り道もあります。その場合も10分ぐらいです)
ここに寄った理由はこれ!昔ながらの喫茶店のナポリタン!アツアツの鉄板の上にのってやってきます!しかも麺の下には半熟の目玉焼きが隠れています!興奮して!マークだらけの文章になってしまいました!
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サラダ付きで700円。 |
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外観はそれほどでもないですが、店内には昭和の喫茶店感が溢れています。カウンター奥のショーケースもいい味を出しています。中にはフルーツジュースの材料がたくさん入っていました。メロンジュース、オレンジジュース、アップルジュース、グレープフルーツジュース、バナナジュース、なしジュースなどのメニューがあり、どれも500円です。
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リバーストーンの最寄り駅は、馬堀海岸駅。というわけで、ふたたび馬堀海岸駅に戻ってきてしまいました。ここが今回の自転車散歩のゴールです。DAHON
Dove Plusをさくっと折り畳んで帰路に着きたいと思います。
今回巡ったポイントと走行ルートです。約14kmの自転車散歩でした。帰宅中にGoogleマップを見ていて気付いたのですが、三軒家砲台跡から観音埼灯台に行くルートは、観音崎公園の中を通らず、いったん横須賀美術館の前に戻り、美術館の前の道(観音崎通り)を道なりに浦賀方面に走ると観音埼灯台の南側に出るので、そちらのルートの方が、自転車を降りて歩く距離が短いので楽だと思います。
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今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回利用したDAHON Dove Plusはシンプルイズベストの最軽量コンパクトバイク。シングルスピードに割り切った仕様で車体重量は6kg台の軽さを実現していて、電車はもちろん、小さな渡し船にも片手でヒョイっと乗せることが可能です。皆さんもDAHONの折り畳み自転車(フォールディングバイク)を持参して、自転車散歩という休日の愉しみはいかがでしょうか。DAHONでは様々な折り畳み自転車をラインナップしていますので、走行機能と折り畳み機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあったモデルを選んでください。
DAHONでは様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載しています。更新時にはFacebookやTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもぜひチェックしてみてください。
*使用車体
DAHON / Dove Plus(Color:アイビー)2022年モデル
*この記事で紹介している情報は、2022年2月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。