2021年7月29日木曜日

ローカル駅からはじめる自転車散歩【東京メトロ 東西線 木場駅】

 ゆっくり起きた予定の無い休日の朝、折り畳み自転車とともに列車に乗って、ふらっと思いのままにローカル駅で降りてみる。特別な観光地ではなく、普通に人が暮らし、働き、近所の公園で子どもが遊んでいる、なんの変哲もない町だけど、のんびり走ってみると、いろいろな発見や出会いがある。そんな、小径車だからこそのゆるい自転車散歩をお送りする連載記事。

いつも通勤で利用して通り過ぎているところで、機会があれば、一度途中下車をしてみたい駅がありました。東京メトロ東西線 木場駅。今回は、木場駅を起点として、東京湾岸沿いを巡り、湾岸の発展を感じられる風景を探しに出掛ける自転車の旅をご紹介いたします。



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東西線木場駅といえば、乗客が最も多いエリアのひとつ。さすがに平日のラッシュ時間だと、輪行であっても自転車を持ち込むことはマナー違反ですが、日中であれば、それも可能。地下鉄の駅から降りてみると、ビジネスマンでごった返しているイメージですが、意外とそうでもない。やはり、新型コロナウイルスの影響でしょうか。


江東区は家屋が密集している印象がありますが、駅から降りて少し行くと大きな公園が広がっています。しかし、駅から降りて、少し進むと木場公園が見えてきます。江戸時代、木場は海辺の町で、材木置き場だった場所。まさに、「木場」という名前の通りの場所だったのです。そのため、昭和50年ごろまで、木場は材木置き場として利用されてきました。その後、多くの材木関連業者が南方の新木場に移転したため、跡地に設けられたのが、この木場公園です。


防災という観点で、避難所として利用されるだけでなく、毎年、角乗りという水に浮いた材木上でパフォーマンスを披露するイベントが開催されるそうです。木が水面に浮かんでおり、江戸時代当時の様子を思い浮かべることができます。


富岡八幡宮で祈願

木場から新木場へと真っ直ぐに向かったのでは、面白くありません。せっかくの自転車旅ですから、あえて大回りをすることで、東京湾沿岸を渡りたいと思います。まずは、周辺の砂州一帯を埋め立て、社地とした富岡八幡宮でお参りをして、道中の無事を祈願。


江東区で神社といえば、亀戸天神社、深川不動堂と並んで富岡八幡宮が有名です。この神社はなんといっても大相撲との関わりで有名な場所。神社の運営費を集めるために行われた江戸勧進相撲の発祥の地といわれ、現在でも新しい横綱の土俵入りなどが境内で行われるだけでなく、多くの相撲関連の石碑が立ち並んでいます。


晴海橋梁

富岡八幡宮を後にして、豊洲方面に向かいます。湾岸沿いを走っていると、目についたのが、見るからに古い橋。湾岸エリアは最近開発が進んだばかりで、現代風な街並みだと思っていましたが、その錆びた橋梁は明らかに昭和からそこに存在するものです。周りの近代的な建物との対比で興味が掻き立てられます。

遠くに一際目立つ錆びた橋。明らかに周りの雰囲気に溶け込んでいません。

近寄ると、ますます古さが強調されます。これは、1957年から臨港鉄道東京都専用線として、使われていました。晴海から豊洲エリアの開発のため物資を運ぶのに利用されていた鉄道ですが、その後、トラックが中心となったことで、利用されなくなりました。それでも、平成元年(1989年)まで利用されていたとのこと!つい最近まで利用されていたのかと思うと、驚きを隠せません。現在は遊歩道として再利用するために耐震補強工事を行っているとのことなので、完成が楽しみです。

書いていて気が付きましたが、30年以上も前なんですね。平成一桁は一世代前。おじさんにとっては平成は昨日の出来事です。



豊洲エリアを抜けて

晴海から豊洲の湾岸沿いを海沿いに進んでみます。海風が本当に気持ちよい場所。豊洲ぐるり公園という名前の通り、海景色を楽しみながら、ぐるりと進みます。水辺は目と鼻の先。それなのにビルに囲まれているというのが、いかにも都会らしく、それもまた一興です。


周囲に見える建造物がどれも楽しませてくれます。跳ね橋、オリンピック選手村、レインボーブリッジなど、何度も自転車を停めて写真撮影をしたくなるポイントばかり。なかなか先に進むことができません。

跳ね橋のアーバンゲートブリッジ。この辺りは商業施設があるので、自転車を降りて進む必要があるエリアがあります。注意してください。

対岸に見えるのが、オリンピック選手村。ローカル駅からはじめる自転車散歩【JR東日本 京葉線 八丁堀駅】の記事でサイクリングをしたエリアです。

有名なレインボーブリッジですが、台場からよりも、豊洲や晴海からの方が全貌が見えて、格好いいと思うのは私だけでしょうか。


お台場でもサイクリングを

豊洲を抜けて、次に辿り着くのは台場です。今や数多くの商業施設がならぶエリアですが、自転車レーンもあります。目指したのはお台場の先端にある南極観測船「宗谷」。


南極まではるばる訪れる船はどんな特殊なものだろうかと思っていましたが、意外と小さい船です。むしろ、この小さい船ではるばる南極まで訪れていると思うと感慨深いものがあります。


取材で訪れたとき、東京オリンピック開催に伴い、多くの場所が閉鎖されていたので、先に進むことができない場所もありました。オリンピックが無事に終了すれば、もう少し、走りやすくなるのかなと思い、再訪したい気持ちでいっぱいです。


お台場から新木場方面へ

平地ばかりと思っていた湾岸サイクリング、調子に乗って走り続けてしまいました。20km以上も休息せず、写真撮影を楽しみながら走っていたので、ちょっと疲れを感じます。休息をしたいと思っているタイミングで、偶然に見つけたのが佃煮屋さんです。


お店の名前は佃宝。佇まいからも老舗専門店というのがわかります。軒先に立っているソフトクリームののぼり。クセになるという佃煮味のソフトクリーム。これは挑戦してみたくなります。

佃煮は砂糖と醤油で味付けするのが一般的。単なる佃煮味ではなくて、佃煮専門店が実際に利用しているタレがそのままソフトクリームの上に。甘辛い佃煮のタレとソフトクリームのひんやりとした感触がサイクリングで疲れた体に染み渡ります。体力が徐々に回復していくのを感じます。最初は微妙な組み合わせと思っていた佃煮とソフトクリーム、気がつけば絶妙の組み合わせなのか、アッサリと完食してしまいました。まさに、クセになる味でした。

ソフトクリームを食べて元気を取り戻したところで、新木場方面を目指します。辰巳エリアで通り過ぎるのが辰巳桜橋。歩行者と自転車専用の橋なのに、その豪華さに圧倒されます。


この区間は国道357号が走るところ。トラックも多いので不安だったのですが、脇道を発見しました。すぐ隣をトラックがけたたましい音を立てて走っているとは思えない、緑あふれる公園「辰巳の森緑道公園」です。訪れたタイミングはまだ紫陽花が残っていました。無数の白い紫陽花が緑道上に植えられていてまるで街灯のようです。ずっと続く紫陽花の道。紫陽花が枯れても、これからの季節は避暑の道として涼しさを提供してくれそうです。





東京湾の多様な風景

辰巳の森緑道公園を抜ければ、新木場駅となりますが、もう少しだけ足を伸ばします。道沿いにそのまま進めば、夢の島公園、新木場緑道公園、若洲海浜公園と続きます。もともと空港予定地として考えられていたほどなので、広大な敷地。その周囲はサイクリングロードとなっていて、本当に海風に吹かれながら走ることができる気持ちの良い公園です。広がるのは東京湾。しかし、先程の豊洲ぐるり公園とは全く違う東京湾の景色です。


ビル群は遥か遠くで、開放感を感じることができます。多くの建造物を楽しめる豊洲ぐるり公園も良いですが、夢の島公園から若洲海浜公園へと連なる東京湾沿いの公園はまったく違った景観で、その対比が本当に興味深いものです。

新木場緑道公園からみえる海景色。地平線とDAHON Horize Discを重ねて撮影してみました。名前のとおり、フレームが水平ですね。


上を見上げると風車が回っていました。大きくて、全体を写真に納め切ることができません。ここでは風力発電も行っています。風車が回転しているときの風を切る「シュッ」という音を初めて耳にして驚愕。自分にぶつかるのではないか?とちょっと怖い思いがしました。


若洲海浜公園の先端まで到達。スカイゲートブリッジ近くから台場方面を見ると、夕日が見え始めました。このまま夕暮れまで待とうと思ったのですが、あいにくの天気で、太陽は雲隠れしてしまいました。夕焼けは心の中で想像します。


日が暮れてしまう前に新木場駅へ到着。スタート地点とゴール地点を同じにする必要がないのが輪行サイクリングの魅力です。新木場駅で自転車を折りたたみ家路につきました。


東京湾は魅力的なサイクリングスポットです。見る場所が違えば、全く違った海景色を堪能することができます。都内に限定しても、全く違う景色が広がっているのが、東京湾の魅力かもしれません。


今回巡ったポイントと走行ルートです。約28kmの自転車散歩でした。



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今回の「ローカル駅からはじめる自転車散歩」は如何でしたか?日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動でき、天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できます。今回利用したDAHON Horize Discは20インチモデルでは最も太いタイヤが採用され、迫力十分なだけでなく、振動もしっかりと吸収をしてくれるので、長距離を走っても、疲れにくい折り畳み自転車です。皆さんもDAHONの折り畳み自転車(フォールディングバイク)を持参して、自転車散歩という休日の愉しみはいかがでしょうか。DAHONでは様々な折り畳み自転車をラインナップしていますが、走行機能と折りたたみ機能のバランスを考えながら直感的な好みも含め、自分にあった製品を選んでください。

DAHONでは、様々な地方のローカルな鉄道駅を起点にした自転車散歩(ポタリング)記事を連載しています。更新時にはFacebookやTwitterでお知らせしますので、ぜひフォローをお願いします。また「ローカル駅からはじめる自転車散歩」のInstagramアカウントもありますので、こちらもぜひチェックをお願いします。


*使用車体
 DAHON / Horize Disc(Color:カーキ)2021年モデル

*この記事で紹介している情報は、2021年7月時点の取材に基づいています。
*歩行者のいるところや細い路地などは押し歩きや迂回するなど、マナー優先でサイクリングを楽しみましょう。